一瞬の夢

一瞬の夢

2004/05/19  三百人劇場(中国映画の全貌2004)にて 1997年中国・香港:108分:監督 ジャ・ジャンクー(賈樟柯)

1997年、といえば香港が中国に返還された年。かといって中国に急に変化が現われたわけではないようですが、この映画は中国の山西省の都会と田舎の中間にあたる街が舞台となっています。

ジャ・ジャンクー監督、27歳の時のデビュー作。

スリをしている青年ウー。昔のスリ仲間が今は事業家として成功、結婚の噂を聞いて街にやってくるところから映画は始まります。しかし、どこへ行っても何をしてもむくわれないウー・・・。

街頭にはテレビや電気製品が売られ、カラオケが大流行。そんな街を無表情で歩くウーは、古い時代の人間でもなく、新しい時代の波にものれないやるせなさ、ひしひし。

カラオケで出会った女性、メイメイとのやりとりも投げやりですが、病気で寝込むと見舞いに行く。そこでメイメイが歌を歌うシーンが長回しで撮られるのですが、このシーンがいいですね。なんとも居心地悪そうだったウーがなんとなく落ち着いていく様子。

でもそれも「一瞬の夢」、実家に帰れば親、兄弟は金のことばかり、何もしないウーは追い出されて「一瞬の夢」

「新旧交代の時代だろ」に対して「新なんてあるものか」と言い返すウーは、新と旧の狭間で立ち尽くしている中国の姿かもしれません。

真面目に働け、金を稼げ、金持ちになれ、そんな説教には背をむけて、誠実さを出そうとすれば不器用で利用されるだけ、そんなウーの姿を借りて、渡る世間のやるせなさ、を手持ちカメラを多用して切り取ってみせた監督の視線は冷静です。

役者さんはすべて素人だそうですが、主人公ウーのなんともたよりなさそうな後姿って、やっぱりやるせない・・・

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