心の羽根
Des plumes dans la tete
2004年6月24日 渋谷・ユーロスペースにて 2003年:ベルギー=フランス合作:110分:監督 トマ・ドゥティエール
ストーリー的には最愛の子供をなくしてこわれていく母の心とその再生を描いているのですが、冒頭、カワセミが川に魚を取りに飛び込むところを魚の視線でとらえたショットをはじめ、ストーリーよりもその映像世界がなんとも素晴らしい映画でした。
この「映像世界」という言葉、これはわからない人にはどう説明してもわからない感性の問題なのですね。
自然があふれている美しさと同時に動物が動物を殺して生きていくという過酷な現実も描いています。
そしてこわれた心が色々な過程を経て、また現実を見ることのできるようになる救いも描かれます。
少年が消えてしまう、といってもそのシーンと映像の上手さで幻想的になっていき、母には子供の姿が見えるのです。その見え方が、視界の隅にすっと出てきたり、木立の向こうに見え隠れしたり・・・だんだん幻の少年と遊ぶ母のこわれていく心がとてもいやらしさなく、わざとらしさなく、観ている側にすぅ~っと入り込んできます。だから恐怖感や不快感は感じないですね。
大きな古びた鉄パイプの上を最初、猫が歩き、子供が歩き、母が歩き、母子が歩き・・・という同じシーンの繰り返しなんかも上手いですね。
その鉄パイプの上を歩く猫の足音まで正確にすくいあげている録音と音の使い方も感心。
沼地で鳥を見るのが好きな孤独な10代の少年が出てきて、幻の子供と遊ぶ母と出会うのですが、この少年は監督の分身かもしれないですね。
ドゥティエール監督は長編はこれが初めてだそうですが、監督自身がバードウォッチングが趣味で、いつも行っているところをロケしているそうで
監督の自然や人間を観察する目というのはとても鋭いと思います。
音楽はほとんど使わず、自然音だけですし、地味な映画なんですけれども実に素人離れした感性を持っていてこの映像世界は独特なものがありますね。自然や動物をメタファーとした人間の精神の小宇宙、なんて言葉も頭に浮かんだりしました。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
0コメント