天国の本屋~恋火

天国の本屋~恋火

2004年6月1日  よみうりホールにて(試写会) 2004年日本:111分:監督 篠原哲雄

2つの原作を一つにしたそうですが、ベタベタしていなくてスムーズないい映画でした。

天国と地上の描き分けをあえて小細工せず、交互に描く、回想シーンにたよりすぎない、など「正攻法」に見えて、いかにも(テレビドラマなどでやりそうな)ありきたりのことは全くしていないのですね。

ほとんどを北海道でロケしたそうですけれども、天国の草原に重く広がる雲などとても綺麗に撮れていました。

突然、ここは天国です、と言われて戸惑うピアニストの青年。人間の寿命は100年、その寿命100年までを過ごすという「天国」です。ここで青年は本屋で働き、そこで憧れのピアニスト、翔子に出会います。

地上では、その翔子の姪にあたる香夏子(竹内結子二役)が、もう10年も開かれていない花火大会、特に、「恋火」と呼ばれる和火を見たいと、仲間たちと花火大会を計画します。

天国と地上の接点の扱い方が、ファンタジックでメルヘンタッチですが、さらっと流していて本当にしつこくない、するすると観られる映画になっています。出来の良い少女漫画、大島弓子とかね、の感じがありますね。

俳優さんが、豪華ですね。天国と地上を行き来できる本屋の店長、原田芳雄、青年に天国の仕組みを説明して「納得いかない?じゃ、宿題」と飄々としていて、親切なのか不親切なのかわからないキャラクター。

そして本屋の店員(?)の新井浩文がとてもよかったです。『さよなら、クロ』『青い春』『赤目四十八瀧心中未遂』と、どれも違う役どころをこなす、名脇役だと思います。天国にいることの寂しさを穏やかに表現していて、存在感あっていいです。

そして、篠原哲雄監督、もう一本公開中『深呼吸の必要』そして『海猿』と出演作が続く香理奈が、ちょっと影のある役。

意外とさびしそうな表情がいいのです。

そして喫茶店の店主が鰐淵晴子・・・あがた森魚も・・・・

地上では、大倉孝二いいですね。そして名脇役といえばこの人、香川照之。絶望と苛立ちの生活を送る姿、いいですね。

白眉のシーンは竹内結子とのケンカのシーンでしょう。

かなり強引に言葉をなげつける香夏子に対しての、怒りぶり。このシーン、特によかったですね。なんともいえないパジャマもよいです。

竹内結子は、性格、表情の違う二役、この人はさばさばしていて、しっかりしている雰囲気があって、いかにも私、女ですもの・・・、というムードがない良さを引き出していました。

ラストの花火の映像と同時に音がやはり映画館ならではの重みがあって、映画館で観てよかったです。

派手なシーンも、ラブシーンもありませんから、そういうのを期待すると肩すかしをくらうかも。

こういう地味だけどべたべたしていないファンタジックって日本映画ならではのものがあって、私は好きなんです。

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