ハナのアフガンノート

ハナのアフガンノート

Joy of Madness

2004年7月14日 銀座テアトルシネマにて 2003年イラン:73分:監督 ハナ・マフマルバフ

父モフセン、母マルズイエ、姉サミラ全て映画監督一家の次女のハナ。撮影当時13歳。22歳の姉サミラの映画『午後の五時』のメイキングフィルムというより、役者を一般人から選ぶためのキャスティングの様子を追うドキュメンタリーです。

ハナは13歳といっても、8歳で小学校を自主退学してお父さんが作った映画学校で映画の英才教育を受けていますから、普通の子供らしさがないですね。子供がビデオカメラというおもちゃで遊んでいるのとは違う。

姉の熱心というか・・・時にはとりつかれたように「私の話を聞いて!!!!」とヒステリックに叫ぶ姿を淡々と間近で凝視している、「ハナは来ないで、撮らないで」と言われてもどんどん入っていってしまう、最初は映画に出ることを承諾しても話を翻して

逃げようとする大人たちの顔をアップで撮る。「どうしてそんな事言うの?」というまっすぐな視線が、地面をはうように映すスタイルが、あまりにもストレート。物怖じというものを知らないような、そんな大胆さにびっくりします。

キャスティングは難航して、なかなか最終的な承諾を得るところまでいかないもどかしさにイライラをつのらせていく姉やスタッフの様子もものすごく冷静に観ていますね。そういう「大人の顔色伺わない」ハナがスクリーンには出てこないのですが、とても力強く感じました。賢い子だなぁ。

大人たちがタリバンを恐れているのはわかるのですが、話を聞いていくうちに、実は周りの人々、家族、近所の目が怖くて、怖くて仕方がない・・・映画なんか出たら何を言われるかわからない・・・という別にアフガニスタンだからです、ということを超えた普通の大人の恐怖がストレートに出ていましたね。

そのはぐらかし方もいろいろで、特に父親役にしようとした、最初はにこにこ自信たっぷりにやる気をみせるのに、急に態度を翻す(自称)導師の老人の「映画なんて嘘と狂気だ!」というのは意外とあたっているし、(それに対する姉の怒りと強引な説得がまた凄い)

赤ちゃんを映画に出してほしい、といわれた父親が被害妄想的で「映画で赤ん坊を殺して土に埋めるんだろ」と詰め寄るのは、これまた・・・まんざら大否定できないというのが、姉サミラの作った映画『午後の五時』を観るとわかる仕組みになっていて、メイキングを先に観るということはあまりないのですが、この場合は『ハナ~』を観てからの方が興味深いです。

このドキュメンタリーは去年2003年の東京フィルメックスで審査員特別賞を受賞。私は見逃してしまったのですが、なかなか見応えのあるドキュメンタリー映画です。

原題のJoy of Madnessとは映画で流れる歌の歌詞で「利口者にはわからない。狂った者の喜びを。」からですが、何がJoyで何がMadnessなのか?そんなことを考えてしまいました。

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