愛の落日

愛の落日

The Quiet American

2004年8月27日 丸の内 丸ビルホールにて(試写会)

(2003年:アメリカ:101分:監督 フィリップ・ノイス)

『裸足の1500マイル』の監督フィリップ・ノイス、撮影(あの)クリストファー・ドイルのコンビ、再びであります。

原作はグレアム・グリーン、製作はシドニー・ポラック、アンソニー・ミンゲラ他・・・実に地味で静謐で美しくも残酷な映画です。

1952年のフランス占領下ベトナムのハノイを舞台にした英国人ジャーナリスト(マイケル・ケイン)と医師団としてやってきたアメリカ人(ブレンダン・フレイザー)の静かな対決。それは美しいベトナム人女性をめぐっての三角関係にとどまらず、ベトナムをはさんだ欧米諸国のにらみあい、さぐりあいの姿をあぶりだしています。

「人」になぞらえて「国」を描くのがいかにも原作がっていう感じですが、それがマイケル・ケインのイギリス、ブレンダン・フレイザーのアメリカというキャスティングが上手いですね。初老で海千山千のジャーナリストと若くて血気さかんで意欲に燃える青年。その対比と、2人の間にはさまれてしまうベトナム人女性のはかなさ、哀しさが、とても奥深い美しい情景でもって綴られるという風情がいいです。

もちろんベトナム戦争に突入する直前の政局不安定な時代ですから、危険な、残酷悲惨な描写も出てくるのですが、あくまで「欧米人から見たベトナム」という高慢な空気が常にあるので全体的には静かながらも緊張感あふれている所がいいです。

原題のQuiet American(おとなしいアメリカ人)というのは、ブレンダン・フレイザーのことなのですが、この表現が後になって効いてくるサスペンスの要素もあります。今回はいいですね、ブレンダン君。安心しました。(あまり心配させないで欲しい~)

しかしこの『愛の落日』って陳腐な邦題ですね~。なんのことだかさっぱりわからないし、観てみると全然違う~ってちょっと怒りますよ、私。

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