WALKABOUT 美しき冒険旅行

WALKABOUT 美しき冒険旅行

WALKABOUT

2004年8月13日 新宿 テアトルタイムズスクエアにて

(1971年:イギリス:100分:監督 ニコラス・ローグ)

副題には「美しき冒険旅行」となっているのですが、オーストラリアの大自然の美しさと同時に弱肉強食の自然の厳しさを幻想的に丁寧に、時に執念を持って綴っています。

後に『地球に落ちて来た男』『赤い影』を撮るニコラス・ローグらしい「残酷さ」に満ちています。

訳あってオーストラリアの砂漠の真ん中に取り残されてしまった14歳の少女と幼い弟。2人はイギリスからやってきて、オーストラリアで「イギリスの生活」をしているので、2人とも学校の制服のまま取り残されてしまった。

大自然の中で、生き抜く術も道具も何もない2人の前に「成人の儀式」=WALKABOUTをしているアボリジニの少年に出会う。姉弟は少年と一緒に旅に出る。

少年(後に『裸足の1500マイル』で子供たちを追う大人を演じるデヴィッド・ガルビリル)は、槍や弓で動物を狩りながら旅をしているものの、所々で出会うのはオーストラリアに移住してきた白人たちの醜い爪痕。建物を建て、捨て、動物を銃で狩猟する・・・そして少年がいないと生きられない姉と弟もあくまでも「白人社会の掟」を守ろうとする。

砂漠の谷間に溢れる泉で少女は裸になって自由に泳ぐ。その映像はまるで少女が精霊になったかのような幻想的なシーンです。しかし、少女は少年の求愛を受けても全く相手にしない・・・少女は白人社会そのもの、他の国にやってきても排他的で、少女の残酷さは個人のわがままではなく、社会のわがまま。

そして少女は、3人で泉で自由に泳いだあの日のことをいつまでもいつまでも忘れることはできない。それは甘美な思い出ではなく何かにとりつかれてしまったような疚しさにさいなまれるような悪い夢。

そういう視線が全編に貫かれているので単なる「美しき冒険旅行」ではないと感じます。

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