箪笥(たんす)

箪笥(たんす)

2004年8月4日 新宿シネマミラノにて

(2003年韓国:115分:監督 キム・ジウン)

監督のキム・ジウンは『クワイエット・ファミリー』『反則王』『Three/臨死』(第一話Memories)の監督さんだったのですね。

この監督が描く世界の基本は「家族」ですねぇ。家族の絆の強さからくる束縛。

この映画なんて、ホラーである前に「家族の物語」なんです。

原作というか話のもとになっているのは韓国の古典怪談話『薔花紅蓮伝』という継母ものだそうですが、最初は単なる「いじわる継母もの」かと思うのですが、それが二転三転するプロットの組み立てが上手いです。

映像、美術、照明・・・とても綺麗に凝っていて、これまた「単なるホラー」を超えていると思います。

湖のほとりにたつ古い家に到着した、父と仲の良い姉妹。それを出迎える継母。姉妹と継母はうまくいかず、父はそれを黙認してなにも言わない。姉妹と継母の対立は深まるばかり・・・・どこまでエスカレートするのか・・・と思わせておいて、90度角度変えてしまう・・・次々を現れる謎が迷宮のようになっていき観客は翻弄されてしまう。

ひとつひとつの謎を全部説明せずに、大きな波のうねりのようにラストへと向かうのは『4人の食卓』と同じですね。

継母が姉に「本当の怖さっていうのを教えてあげましょうか。忘れたくても、消したくても出来ない思い出。一生、それにつきまとわれることが怖いのよ」というように、視覚的なグロテスクなホラーの部分はきちんとした美術で抑えて、映像は悲しく美しく、

残酷な「人間の頭の中」というものを描いているのがいいです。一番、怖いのは父の黙認、のようにも思えますし、家族の血、女の流す血・・・「血」というものの本当の怖さ、疎ましさの出し方も抑制がきいています。

継母ヨム・ジョンア(『カル』、『H』→レイトで未見なのが悔やまれる)、姉イム・スジョン、妹ムン・グニョン(テレビドラマ『秋の童話』の妹の少女時代役・・・・相変わらず泣き演技、凄いですな)この3人の演技合戦、花火バチバチって感じです。

最後まで見終わってみると、前半に色々なヒントがちりばめられていたなぁ、と気がつくので、実はもう一回観たいです。

わかりやすいホラーを期待してたのに、「訳わかんな~い」で捨ててしまうような映画ではないのです。

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