靴に恋して

靴に恋して

Piedras

2004年9月30日 東京国際フォーラム・ホールD1にて(試写会)

(2002年:スペイン:135分:監督 ラモン・サルサール)

宣伝などではお洒落な靴がずらり・・・なのですが、これは5人の女性を描いた女性映画です。

冒頭、5人が靴になぞらえて紹介されます。

イザベル:小さな靴を買う女、アニータ:スニーカーをはく女、アデラ:扁平足の女、レイレ:盗んだ靴をはく女、マリカルメン:スリッパをはく女・・・の5人。お洒落なブランド靴を買えるのは高級官僚の妻、イザベルだけです。

前半は5人のシビアな現実が平行して時に交錯して描かれます。

特に、恋人に去られそうになって、追いすがるレイレなんて、もう、これだから恋人が逃げるのよねぇ~という恋人に同情するくらいベタベタと依存していて情けない。

イザベルも金持ちなだけで生活は不満足。不倫に万引きに依存して・・・と目の表情とかしぐさとか上手いというか、リアルで気持ち悪くなる嫌な女ぶり。

この映画は依存と同性愛が強調されています。女達の1人、アデラは『オール・アバウト・マイ・マザー』のアントニア・サン・ファンでもと男性ですが、今回は知的障がいを持つアニータの母を演じているし、レイレのよき理解者、ハビエルはゲイだから恋愛感情抜きで親友としてレイレを見守る。他にもドラッグ依存しているマリカルメンの義理の娘など、不満のはけ口を何かに依存することで埋めようとしている姿がよく出てきます。男達は女に愛など感じない。

イザベルは金の力にまかせて靴のコレクションをしていますが、実用的なものはなく色やフォルムだけ美しい靴ずらり、むなしく見栄を満足させるためだけに集めている哀しさを感じます。

日本人は家の中では靴をぬぎますが、スペインでは靴は寝るとき以外はいつでもはいているもので、それを履き替えるということと普段の生活に変化をつけるということをダブらせているのでしょうか。

なんともシビアな生活をしている5人ですが、後半はそれぞれに転機を見つけるという前向きな視線があります。

『映画のプリティ・ウーマンみたいね。ハッピー・エンドじゃないけど』という台詞もあるようにハッピーエンドではないけれど、自分に合う靴を見つけることができる、という心強さがあり、後味はすっきりさわやか。それが不自然でないところがさりげなくていいですね。

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更夜飯店

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