雲 息子への手紙

雲 息子への手紙

Nuages

2004年9月20日 東京都写真美術館ホールにて

(2001年:ベルギー=ドイツ:76分:監督 マリオン・ヘンセル)

同じ姿を二度と見せない雲・・・これ全編雲と風景の映像が続くのですが、淡々としているようで同時に情熱に満ちているようなコインの裏表のような印象を受けます。

先日観た『ディープ・ブルー』がベルリン・フィルのフルオーケストラの音楽で盛り上げて盛り上げていたのに反してこちらは、マイケル・ガラッソ(『花様年華』『一票のラブレター』『恋する惑星』など)の日本の琴とブラジルのパーカッションをメインにヴァイオリンの旋律が静かに流れる・・・ので観ていてとても気持ちいいです。

副題に息子への手紙、となっていますが、ナレーションの部分はそう多くなく、静かな映像の合間に・・・というもので、さりげない母の気持ちが読み上げられるというもの。子供を持った喜びと同時に自由がなくなる実感と子供が大きくなって離れて行くときに感じた寂しさと自由がまた訪れる気持ち。

観ていて退屈で眠くなるのではないか・・・そんな予感があったのですが、この映画を観ていると全然関係ない昔に観た風景が次々とよみがえってくるのに自分で驚いてしまいました。眠るどころではなかった・・・忘れていた風景が雲のようにわいてくる。

そしてこの映画は自分の風景を思い出しながら観る余裕を観客にたっぷり与えてくれるのです。

タイに行った時、夕方になると突然のスコールで雷鳴がとどろいたのをびっくりして窓から眺めていたこと。

スキーによく行っていた時に頂上から見た空や雲。雪に囲まれた山の風景。

昔飼っていた猫が生まれて初めて雪が降ってくるのを見たとき、一日中窓辺で雪が降っているのを見ていた後ろ姿。

私が観たのはフランス語版でナレーションはカトリーヌ・ドヌーブ。英語版はシャーロット・ランプリングです。

日本では公開されませんが、クレジットを見ると、ドイツ語版、スペイン語版、オランダ語版があってそれぞれ女優さんが手紙を読んでいるようです。

DVDなどで全てのバージョンが観られる(聴くことができる)ならば・・・・是非言葉の違いを楽しんでみたいです。言葉を大切にしているのっていいなぁ~と思います。

家に帰る時、地下鉄が地上に出たとき、車窓からの夕暮れの雲に思わず見入ってしまいました。まだまだ映画が続いているようで。

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