ドリーマーズ
The Dreamers
2004年9月10日 シネスィッチ銀座にて
(2003年:フランス=イギリス=イタリア:117分:監督 ベルナルド・ベルトリッチ)
『ヴァン・ヘルシング』などを観るとアメリカのヨーロッパへの素直な憧れというのがわかりますが、この映画はそんな「素直な」憧れの足元をすくうかのような視線です。
1968年パリ。アメリカからの留学生マシューは映画好きが高じてシネマテークに通ううち魅惑的な双子の男女、イザベル(エヴァ・グリーン)とテオ(ルイ・ガレル)と出会い、2人の世界に引き込まれてしまう。
両親は旅行中で、迷宮のような豪華な家に招かれて、最初は未知なる憧れのフランスで友人、しかも同じ映画好きの友人が出来たことに素直に喜ぶマシューですが、イザベルとテオの異常ともとれる深い仲に入り込めず、理解ができず、ただ2人に翻弄されてしまう・・・外では五月革命直前、不穏な空気が流れ始める。
マシューがフランスに来て、映画館に通いつめ、同じように映画を愛する友人が出来た喜び・・・の部分が過去の(主に1930年代)ハリウッド映画やフランス・ヌーヴェルバーグ映画の各シーンにダブらせて描くところは同じ映画が好きな私には
マシューと同じように嬉しいし、共感もわくし、興味もわきます。映画について議論を交わし、マニアックなクイズを出し合う。
ゴダールの映画『はなればなれに』のルーブル美術館を駆け抜けるシーンを真似して疾走する3人。これが『はなればなれに』のアングル、角度、そっくりそのままなんですね。
しかし、このイザベルとテオの2人。育ちもよく、知性と教養があり、美しく、若者らしい反体制の思想を持っているのですが、同時にもう大人なのに、いつまでも離れられない密着した異常さ、2人の間では当たり前だけれども、端からみたらエキセントリックでサディスティックで、子供じみた露骨な残酷さをアメリカ人の仲間、マシューに見せつけ、押しつけてくるあたりから、『恐るべき子供たち』になり、なんとも危険な香りが漂い出しますね。
3人が暮らす迷宮のような家の中を自由闊達に動き回るカメラ、不穏な空気をはらみながらも美しい街並みなど、マシューと同じく、「危険だけどやめられない」といった気持ちになるのでした。
マシューがどんなに2人の間に入り込もうとしても、イザベルと恋人になってもイザベルは結局、何かあるとテオの所に戻ってしまう。反体制、革命思想をあれこれ言い合う割には自分たちの世界から一歩も出ようとしない身勝手さ、幼稚さがだんだん怖くなってきます。余所者は結局、入り込めない世界という残酷な拒絶の壁をみせつける。
最初から拒絶、ではなくて受け入れるように見せておいて、いざとなると放り出す拒絶の怖さ。
撮影も美しく、引用される映画のシーンも美しいシーンで挿入するタイミングの上手さ、そして2人の、特にテオの美しさと冷酷さを秘めた眼の表情。
音楽もジャニス・ジョプリン、ドアーズ、ミッシェル・ポルナレフなど、当時をよく知っている、思い入れのある人がきちんと作りました、というのがやはり「愛の巨匠」ベルトリッチ監督なのですね。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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