懺悔〈ざんげ〉

懺悔〈ざんげ〉

Spider Forest

2004年11月25日  有楽町朝日ホールにて(第5回東京フィルメックス)

(2004年:韓国:120分:監督 ソン・イルゴン)

1人の男の頭の中を「森」に見立てているような、サスペンス・ホラーです。

窓から見える深い森をバックに1人の女性が後ろ向きに立っているファースト・シーン。

主人公のカンが、何故か森の中のコテージで見つけてしまった男女の死体。誰かに殴られ気を失い、またその男に導かれ、自動車事故に会う・・・トンネルの明るい光の中で、トンネルの壁のドアから誰かが出てきたのにびっくりした瞬間の出来事。

そして映画はカンをめぐる人々を時間軸をずらしながら描いていきます。この時間の使い方・・・最近よくあるフラッシュバックをぱっぱっぱっとはさむ、というのではなく、主人公と一緒になってぐるぐると時間の中をさまよう・・・といった感じです。

妻を飛行機事故でなくした・・・というのも、直接的ではなく、さりげなく普通の夫婦の会話を通して、ぱっと見せる、その見せ方をはじめ、妻、恋人、謎の写真屋の女性・・・3人の女性が、カンの時間交錯の中で蜘蛛の糸のようにきちんとはりめぐらされています。

映像も深い色を強調していてとても落ち着いた雰囲気ですが、監督は脚本と同時にシーンの絵コンテを綿密に描き、それに沿う形で作られたそうです。それは、予算と時間が限られていたために、最初からきちんとした絵を考えなければならなかった、という話でしたがこういう映像の完璧さは、ある制約の中で出来るものなのでしょうか。

森というのが、ひとつのキーワードですが、主人公の頭の中は深い森。出口の解らない森。なにかが出てきそうで出てこない森です。主役のカン・ウソンは韓国のテレビドラマで甘い役で人気だそうですが、頭から血を流し、喪失感と焦りを常に感じさせる熱演でした。

テレビドラマのファンの人が名古屋から来ていていましたが、テレビドラマのファンからしたらショックな役柄だったのではないかなぁ~と思います。あまりに(わかりやすさが特徴の)テレビとはかけ離れた映像と時間軸の使い方で、映画の見せ方の秀逸さがなによりも際だった映画です。

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