三人三色

三人三色

Digital Short Films by Three Firlmmakers

2004年12月15日  渋谷 UPLINK Xにて

(2004年:韓国:100分:監督 ポン・ジュノ、ユー・リクウァイ、石井聰亙)

韓国のチョンジュ(全州)映画祭のプロジェクトで、アジア3国の監督がデジタルフォーマットで短編を作ったものをオムニバスにした映画です。

①『インフルエンザ』(韓国:28分:監督 ポン・ジュノ)

1人の男の姿を、全て監視、防犯カメラから映し出すというアイディアが秀逸です。

地下鉄で、銀行で、店で姿を現す1人の男が「悪事」に染まっていく様子を実に面白い観点から描いています。

映像に映る男の行動しかカメラはとらえないので、男の私生活、というものは全く描かれないことになります。

最初は真面目に働こうとしていた男が、銀行のATMで金を奪う、地下駐車場で車を襲うといった姿は淡々としています。

しかし、銀行強盗をしようと銀行に入ると、お客様が20周年、20人目のお客様で~~~す、おめでとうございま~す、と表彰されてしまうとか・・・悪意が善意にとられてしまう、またはその逆、という日常生活に潜んでいる皮肉なユーモアを見抜く監督の視線が、なんとも可笑しいです。

周りにいる人も日常生活感があふれているのですが、描いているのはあくまでも「インフルエンザのように蔓延する悪」なんです。

私は、地下鉄でつかまってしまった男の散らばった荷物を足でケンケン蹴るおばあさんが好きなんですけどね。あと、後半男のパートナーとして突然現れる女の風貌と仕草。暴力的で可笑しくて・・・さすが『殺人の追憶』を撮った監督。

そんな姿を逃さない淡々としたユーモア口調がとても好きです。なんだかとてもリアルなのにリアルじゃない犯罪の実情を映画にしてしまう、というのはさりげなくて手が込んでいます。

②『夜迷宮』(中国:30分:監督 ユー・リクウァイ)

近未来、地上が大寒波に襲われてしまって人間は地下にPLASTICITYという都市を作り上げているという設定のSF、サイレント映画タッチの短編。

地下50層目のホテルに集まる人々を、独特なアイボリーとイエローの中間・・・のようなソフトなカラーで統一しているところが観ていて綺麗で気持ちいいです。

カメラにわざと曇りを入れて、ぴかぴかと原色に光るライトを印象的に使ったり・・・そして、追われる民族と匿う男の様子をまったりしたムードで描きますからあまりサスペンス風味はないのですが、ラスト、意外なほのぼの恋愛成就になっていて、正に迷宮に入り込んでしまったような感じを受けます。ホテルの廊下の壁がお餅みたいにむちむちしている質感とか・・・上手く雰囲気を出していますね。

③『鏡心』(日本:40分:監督 石井聰亙)

石井聰亙監督だから、爆裂した映像かと思いきや、1人の女性(市川実和子)の臨死体験をファンタジックに描く、というものでした。

女性は、インディペンデント映画の脚本を書き、出演しているけれども、どうも情緒不安定で、遅々として撮影は進まず、映画監督(町田康です・・・)はさすがに堪忍袋の緒が切れそうで嫌なムードが漂っています。

そんな女性の臨死体験・・・海と水と木々に囲まれた風景の中にいつも風が吹いて天国のような、楽園のような・・・そんな風景の中を彷徨う女。その映像はバリでロケしたそうですが、とてもクリアで美しくなんとも寂しい。

臨死体験が、寂しいというとらえ方が興味深いところです。

この映画のロング・ヴァージョンは、後日公開されるとのことですが、市川実和子の「人生に嫌気がさした顔」が強烈・・・・

3本とも独特の個性があって、こういうプロジェクトを映画祭が主催してしまう、というのが凄いですね。こういった動きがもっと大規模になれば、今の映画界というものも変わっていくかもしれません。 

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