きみに読む物語

きみに読む物語

The Notebook

2004年12月14日 新橋 ヤクルトホールにて(試写会)

(2004年:アメリカ:123分:監督 ニック・カサヴェデス)

映画の冒頭、夕日で赤く染まった川面を静かに漕ぐボートの映像にクレジットタイトルが出る・・・という最初のシーンからして透明感があって美しい映画を予想させます。

現代の老人療養施設で、老女(ジーナ・ローランズ)にノートに書かれた物語を読んできかせる老人(ジェームス・ガーナー)

その物語とは1940年アメリカ南部の街で、一夏の避暑に来た金持ちの女の子と、木材置き場で働く少年が出会い、身分違いの恋に身をこがす・・・というもの。

『16歳の合衆国』で繊細な役をこなしたライアン・ゴズリングが、やはりシャイで繊細だけれども一目惚れした女の子には、かなり強引なアプローチをする無鉄砲さ、若さを持っている青年を演じていました。

貧しく、父(サム・シェパード)が詩を朗読させて、学校では教わらない教養を実は身につけてはいるけれど、所詮は「時給40セント」しか収入のない労働者。所詮はかなわない恋なんですね。

愛し合うとひとことで言っても、この2人は毎日のように喧嘩するけれども、すぐに仲直りできる、という関係だというのが大事。喧嘩をしても許せる、相手に謝ることができる・・・そういう関係が大切だというのが強調されています。

ただ、べたべたしているのではなく、また、相手にひたすら合わせて我慢してしまうことなく相手の悪いところ、自分に合わないところも言い合って、許せるのは、一種の強さ、です。喧嘩が2人の絆なんですね。そこがこの若い恋人同士が本当に相性が合うという納得のさせ方です。

ノアという青年は、女の子が去ってしまっても、1人その気持ちを持ち続け、夢だった農場を買い取り改築に精を出す。

そして戦争の勃発。女の子はニューヨークの大学へ進み、別の道を歩み始める。

現代の老女とは、かつての女の子だ、ということがわかりますが、現代の老人2人の関係がまた、微妙なんですね。

ラスト近くになって老人が読む若い2人物語は終わりそうになる・・・そこで現代にスイッチするタイミングが絶妙。

人によりますが、自分に都合悪いことは忘れてしまう、またはいつの間にか自分で自分を許して、なんとも思わなくなる・・・そんな中で忘れてはいけないことは思い出さなければならないという現実。思い出して欲しい、でも言葉だけでは思い出すことが出来ない現実。人間、老いてからが問題なのかもしれないです。

1人の女性を想い続ける・・・ということでは韓国映画の『菊花の香り』のパク・ヘイルが、何があっても愛し抜く、という「普通あり得ない」情熱を持っているのですが、この映画はそのまた先の先まで、徹底しているところ、老人の老いというものもしっかり描いている所がまた、静かな情熱を感じさせますが、決して声高でなく、押しつけがましくないです。

監督は、「インディペンデントの父」ジョン・カサヴェデス監督、老女を演じたジーナ・ローランズ夫妻の息子、ニック・カサヴェデス。

川に浮かび、空を飛ぶ白鳥の姿を象徴的に使ったり、台詞では語られない部分を映像で見せてしまう、若い2人と老人というその間の60年間は全く描かないけれど、映像で語る部分が多くあって、映画ならでは・・・がわかっている力量を感じます。

原題の'The Notebook'ですが、この『きみに読む物語』も内容にとても合っているいいタイトルですね。 

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