恋の門

恋の門

2004年12月16日  渋谷 シネマライズにて

(2004年:日本:114分:監督 松尾スズキ)

蒼木門(松田龍平):石で漫画を描く自称「漫画芸術家」、証恋乃(酒井若菜):コスプレーヤーでコミケに参加、同人誌に漫画を描くOL,毬藻田(松尾スズキ):もと売れっ子漫画家、今、漫画バーのマスター。

・・・という訳で中心になる3人の共通点は、「漫画」なのですが、それぞれが向いている方向が全然違う、その3人がすれ違って交錯するのを「きちんとしたドタバタ」で描いています。

すごくエキセントリックで、デフォルメされているのかな、と予想していた割にはきちんとしていて、スズキ人脈ともいえる豪華な出演者たちを楽しみつつ、門と恋乃のストレートなラブ・ストーリーになっているという・・・上手いですね。

もうひとつのキーワードが「貧乏」なのですが、貧乏の苦労は描かないで、貧乏だぁぁぁぁ~~~と叫んでいる割にはちゃっかり小銭を稼いで、目先の金は手に入れる、または、えへへ、貧乏になっちゃった!という軽さが底辺にあるので、貧乏という味付けをしたラブコメといってもいいかもしれません。

門役の松田龍平は、上目使いをすると驚くほど、松田優作に似ているのに、ドキとしてしまうのですが、恋乃とつきあいたいという下心でコミケ・コスプレの世界に足を踏み入れるけれど、「なんだ、これは!!!」という気持ちばかりで一緒にはまれない重さがありますね。龍平君は基本的に重たいという感じがよく出せる人だなぁ、と思います。

反して、恋乃役の酒井若菜は、もうくるくるくるくる変わる表情、声、外見・・・今まで脇でお馬鹿な女の子をやっていたことが多かったけれど、真面目になっても、真面目に見えない百変化不思議少女を好演していました。「私のコスプレって中身がなんにもない・・・」ってつぶやく時の顔とかとても真面目なんだけど、やっぱり不真面目感漂ってます。

この2人の取り合わせっていうのが一番面白かったのですが、重さと軽さのバランスがギリギリの線いっている、という所、この2人でなかったら誰がいいのか?って思うと他に思い当たらないのですね。

やはり大人計画の松尾スズキが監督していますから、演劇っぽい所もあるのですが、あざとい台詞を(門が石を部屋いっぱい集めていて「水道屋に恐山って言われたんだ」っていうのが一番好き)上手い役者でカバーして、それを何重にも重ねているから、観ていて純粋に楽しいし、最後には、これは門と恋乃の純粋な恋愛映画だったんだな、って気が付く仕掛けの数々が楽しめる貴方は、日本映画をよく観ている人。

私はやはり、3人のバトルを楽しみつつ、漫画バーの常連の塚本晋也監督、平泉成と大竹しのぶのパパ&ママ、ちょっとだけでてくる田辺誠一と片桐はいりのカップル、なんだか嬉しそうな小日向文世、本屋の市川染五郎、父、大竹まこと、母、筒井真理子とか・・・嬉しい脇役に熱心に見入ってしまった、というのが正直な感想ですね。

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