ベルヴィル・ランデブー

ベルヴィル・ランデブー

Belleville Rendez-vous

2005年1月27日 新宿テアトルタイムズスクエアにて

(2002年:フランス:80分:監督 シルヴァン・ショメ)

ナンセンス、エスプリ、ユーモア、デフォルメ・・・もう独特な世界を持っています。

冒頭、♪スィンギン ヴェルビューランデブ~♪というレビューの舞台から始まるのですが、観客の女の人は異様に太り、男の人は小さくひょろひょろ・・・。

それをテレビで観ているのは、おばあちゃんと2人くらしの男の子シャンピオン。

ちょっと太っていて、友達がいなくて・・・寂しそうな様子を見ているおばあちゃん・・・このおばあちゃんが無表情でメガネの奥の目は全然笑っていないのです。

いかにも甘い、やさしいおばあちゃん、ではなく厳しそうな近寄りがたい雰囲気を持つおばあちゃん。でも、ドアの影から寂しそうなシャンピオンを見て(そのドアの隠れ方がいい)、子犬を贈り、自転車が好きそうだ・・・と察知して(という言葉が正しい・・・シャンピオンは何もねだらないのだから)自転車を与える・・・素直に喜ぶシャンピオンを、うむ、良し!という風に見つめるおばあちゃん。

そしていきなり時は飛んで、ツール・ド・フランスに出る為の特訓をしているおばあちゃんとシャンピオン。

この青年シャンピオンが、あの太った子供からは遠くはなれたひょろひょろした体つきで、太ももとふくらはぎだけが異常に太い・・・という細い所と太い所が極端で、中間の丸さというのがないんですね。子犬だったブルーノは大きくなって、お腹はでっぷりでも手足はひょろひょろ・・・というシャンピオンと逆の体型なんです。

さて、ツール・ド・フランスの途中で、何者かにさらわれてしまったシャンピオン・・・おばあちゃん、行動力の人ですから、気の弱いブルーノを連れて孫奪回のため、大都市ベルヴィル・ランデブーへと向かいます。このベルヴィル・ランデブーというのは暗にアメリカのことなんですが、それがわかるシーンが大笑い。

そこで出会うのが、昔、レビューで歌っていた、今は老婆となった三つ子のおばあさんたち。このおばあさんたちがいいんですね。

生活の知恵で、自活して(これがかなりナンセンスな荒技の連続)、自作の楽器で演奏する。新聞、冷蔵庫、掃除機!での演奏に、自転車には詳しいおばあちゃんの自転車のホィール打楽器が加わって、レビュー、レビューの楽しさ。ミュージカルの要素もたっぷり。

世間からつきはなされた者たちのしたたかな生き方、人生の楽しみ方。ベルビュー三姉妹はいつでも、ひょっひょっひょっを笑いを絶やさない。そして無表情なおばあちゃんと、トラウマかかえた犬のブルート。もう、この組み合わせが最高ですね。

そしてシャンピオンを誘拐した謎のマフィアもデフォルメされた四角い姿・・・細いところはとことん細く、丸いものは四角くしてしまうアニメならではの楽しさ。

ブルートはあまり役に立ってないようでも、おばあちゃんには欠かせない家族。ブルートもついていきます、どこまでも。家族の結束の固さというのも声高ではないけれどこの映画のテーマ。

そんなマイノリティー的な存在のキャラクターが大暴れ?するのは観ていて爽快だし、アニメの色も茶色とセピア風でとてもソフト。過激な色使いは全くありません。観ていて目に優しいです。台詞もほとんどなくてパントマイム風な動きで語ってしまう上手さ。

何故シャンピオンが誘拐されたのか・・・も面白いのですけれど、やはりおばあちゃん+老三姉妹の言葉はなくても息のあった行動が、とてもユーモラスで皮肉に満ちていて、微笑ましいし、その生き方がとても潔くて見習いたいくらいでココロ強くなる映画です。

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