戦争のはじめかた

戦争のはじめかた

Buffalo Soldiers

2005年1月5日  シネカノン有楽町にて

(2001年:イギリス=ドイツ:98分:監督 グレゴール・ジョーダン)

原作と俳優はアメリカ人ですが、監督・美術・編集はオーストラリア人、音楽を含むスタッフはイギリス人、ロケはドイツ、資本はイギリス・・・という一見アメリカ映画に見えて実は多国籍映画なんですね。

東西ベルリン統一直前のドイツのアメリカ軍駐屯地。

そこでは、全く緊張感なく(ここが西なのか、東なのか全然わかってない、というくだりもあります)ただ、駐屯しているだけのアメリカ軍兵士の敵は、退屈。

事務官エルウッド(ホアキン・フェニックス)は、無能な上官(エド・ハリス)を上手く操って、軍事品を横流ししたり、ヘロインの精製をして涼しい顔して暇つぶし状態。そこへスコット・グレン扮する「ベトナム戦争の勇士」リー軍曹が、やってくるとたるみきった軍を一掃しようとします。

エルウッドとリー軍曹の対決の始まりです。

外では戦争やっていないのに、軍の中で戦争やってる馬鹿らしさ、これでもか、と描いていますね。アメリカ軍のワルを表層的に描いているだけでなく、その中の人間関係、対立を描いて、「平和な時、戦争は自ら戦争する」というニーチェの言葉通りのむなしさを浮き彫りにしています。

ホアキン・フェニックスの胆のすわったワルぶりが見物。1人では出来ないので仲間とワルをしますが、一匹狼状態を常に保っていて、距離をおいている。

何が起きても表情変えず、したたかな仕返しをする。リー軍曹にこれみよがしのいじめを受けても、飄々としてより上をいくいやがらせを無表情で淡々と行う。

まさに「冷戦状態」の作り方、テンポのいい会話、キレのいい音楽。軍の演習の馬鹿らしさ・・・麻薬でヘロヘロになった戦車は、堂々と公道を走っていく。

かなりキツイ毒を持ったキャラクターのホアキン・フェニックスですが、なんとも小人物な上官、エド・ハリスの「腰は低いがプライド高い」人物像が、また皮肉ですね。かなりくっきりとしたキャラクターの描き訳がとても上手いです。

内容が時期的に・・・というのもわかりますけれど、この映画の寓話性というものを考えて、よくよく見ればこれは単なる「アメリカ軍の悪口映画」ではなく、戦争のはじまりかたの根っこの部分をついている、ブラックユーモア映画なんですね。そこに気がつくかどうか・・・だと思います。

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