シルヴィア
Sylvia
2005年2月25日 シネスィッチ銀座にて
(2003年:イギリス:110分:監督 クリスティン・ジェフズ)
1950年代シルヴィア・プラス(グイネス・パルトロウ)がアメリカからケンブリッジ大学に留学して、のちの桂冠詩人、テッド・ヒューズと出会って結婚、出産しますが、テッドは順調に作家、詩人としてのキャリアを築いていくのに、家庭と詩作の両方を満足させようと、あまりにも両立させようとするあまり、精神的にバランスをくずしていく・・・というのが全面に出ていますね。
シルヴィアは金持ちの娘だし、文才もあるのですが、芸術家としての特徴とでもいえる繊細さ傲慢さを持ち合わせています。
人より抜きんでるということは、「こんなものでは、嫌だ。違う、違う。私は気に入らない。満足しない。」という気むずかしいパワーがそうさせることがありますが、シルヴィアはこのタイプですね。
誰にどう思われようとかまわない、というのではなく、周りになんとしても自分を認めさせたい、という自意識過剰。それには孤独や批判に耐えなければならない事があるわけですが、女性として妻として愛され、守られたいという気持ちもある。
詩人として作家として、認められたい反面、夫にずっと愛されていなくては気に入らない、そして妄想的に嫉妬心や、独占欲が強い。自分が中心でなければ嫌な気性の激しいタイプでもあります。
高潔で知的で傲慢で繊細で・・・そんなシルヴィアは時には、活き活きと才能を開花させ晴れやかに、時には鬼のように醜く形相が変わります。グイネス・パルトロウはよくこの内面の鬼の気持ちを出していましたね。
この映画のスタッフは美術、衣装、撮影など過去、文芸大作を作ってきた人たちが結集して、その「私が私が!」という世界をとても重厚な美しさで見せているところが映画的にとても高度です。
前半の学生生活をはじめ、チョーサーやシェイクスピア、イェーツなどがどんどん出てくる日常会話のアカデミックさ、というのは、私の英文学の素地が薄いのと、やはり言語(英語)ならではのリズムが、字幕では伝わりにくい、ということとあわせて、全てを感じ取り、受け止めることはできませんでした。しかし、風景や建物などが、その文学の重みと深さをよく映しだしていて、落ち着いてとても知的なムードが満載です。
1人の女性として、誰もが持っているものを描いている、という点では、目をそらしてはいけないものをきちんと見据えています。
シルヴィアは30歳で子供を残し、自らの命を絶ち、著作が評価されたのは死後なのですが、もし、今生きていてこの映画を観たら「違う、こんなのじゃない!」と気むずかしく言いそうな気もしますけれど・・・。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
0コメント