秘密と嘘

秘密と嘘

Secret and Lies

2005年2月24日 ビデオにて

(1996年:イギリス:142分:監督 マイク・リー)

本当は誰にも言いたくない、知られたくない秘密や嘘、それを暴露するということを乗り越えて、痛みを感じながらも生きていくこと・・・暴露したことで得られた痛みの代償の幸福。そんな人間の苦しさと幸福を丁寧に描いています。

主人公のシンシア(ブレンダ・ブレッシン)はシングル・マザーで工場で働きながら、娘と2人暮らし。貧乏でなんの楽しみもなくて、反抗的な娘に手を焼いて・・・・私は可哀想、私は可哀想と、写真店を開いて成功している弟夫婦をうらやみながら、依存して、不満だらけの生活。

黒人で検眼師として自立している女性、ホーテンスは母が死んだ後、自分は養子であり、実の母を探す決意をします。しかし、残された記録にあるのは母は白人のシンシア・ローズという女性だという真実に驚き、本人に会って確かめようとします。

そこでシンシアとホーテンスは出会う訳ですが、シンシアはティーンエイジャーの時、妊娠して密かに出産して顔も見ないで養子に出してしまった娘の突然の出現に、おろおろおろおろ・・・。いい年をしても金魚みたいにすぐ口をぱくぱくさせてパニックになってしまうシンシアますます、口パクパクで、これは誰にも相談できないし、愚痴も言えない。

ところが実際、シンシアがホーテンスに会ってみると・・・知的で立派な仕事をして、自立して裕福に暮らしているホーテンスにびっくり、会うのを嫌がっていたくせに、急に自分の娘が!という喜びに有頂天になってしまうのです。

ホーテンスに会うのが楽しみになって、生活が急に明るくなって・・・だんだんホーテンスを自慢したくてたまらなくなる。

しかし、ホーテンスの存在は周りには秘密、絶対に秘密で、またおろおろおろおろ・・・。

この映画は1996年のカンヌ映画祭でパルムドール賞、主演女優賞(ブレンダ・ブレッシン)、国際批評家連盟賞の三冠を達成したのですが、シンシア役のブレンダ・ブレッシンの基本的にはいいひと、なんだけれども狭量で、小心者で、情けなくて、でも見栄っ張りで・・・という演技が凄いのですね。いやらしい役をとても自然に演じていて思わず、シンシアに思い入れが・・・口をパクパクさせて、ああああ、どうしよう、どうしようというのがとても愛おしく思えてくるのですね。

シンシアはとても自己中心的で保身の気持ちがとても強い小心者で、そんな人がどうやって、秘密と嘘を乗り越えていくのか・・・というのがとてもスリリングでした。

また周りの人物もそれぞれ秘密や嘘を隠していてそれが交差する後半。そして至福のラスト。

この映画は完成シナリオなしで役者との長期リハーサルの中でドラマを作っていったそうで、出てくる人の言葉や行動がとてもリアルで親しみを感じる上手さに唸ります。本当に凄い映画ですね。

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