晴れた家~トニー滝谷メイキング~

晴れた家~トニー滝谷メイキング~

Sunny Home

2005年2月22日 テアトル新宿にて

(2004年:日本:68分:監督 村松正浩)

市川準監督の『トニー滝谷』の撮影ドキュメンタリーです。ナレーションは映画にも少し出てくる山本浩司。

2003年の夏の二週間、横浜の高台にある環境事業局空き地でこの映画は全て撮影されました。

大きな「舞台」と呼ばれるセットを組み、その中で映画に出てくる部屋のシーンすべてそこで撮ってしまったのですね。

主役の宮沢りえが「こんな撮影は初めて・・・」というようにちょっと異色の撮影方法でした。

この映画に出てくる全ての部屋は、大道具さんや美術さんによって、次々別の部屋に変わっていく。いわばオープンセットで、夏の日差しと風がいつも吹き抜けています。ここで気がついたのですが、この撮影方法では窓ガラスをいちいち変えられないから最初から窓ガラスはなし、なんです。映画ではきちんとした部屋に見えるのに・・・あの透明感はこんな工夫からも出ているのですね。

撮影は綿密な絵コンテと段取りの打ち合わせの連続です。アイディアが出たり、カットされたり・・・しかし、この映画のスタッフの間にも風が吹いているような感じがします。

パンフレットにもあったのですが、原作の村上春樹、監督の市川準、主役のイッセー・尾形・・・共通しているのはベタベタしたことが嫌い、なのだそうです。確かに、白熱した撮影風景というより、それぞれがぽつぽつと仕事をこなして、本番になると緊張感が漂うという雰囲気ですね。

宮沢りえが、泣いてしまうシーンは一番の思い入れがあったそうで、綿密な打ち合わせだけでリハーサルなしの1テイクでOKなのですが、監督はそのシーンの撮影だけはメイキングのカメラが入ることを拒否します。それだけ集中したかったのでしょう。

そしてその後、監督が宮沢りえの演技を観て、名女優だね・・・とぽつりと言います。

ナレーションが説明というより、「・・・入れないから撮るものがないので、周りの風景をずっと見ていた・・・」というさらりとした言葉になっているのもいいですね。

映画同様、熱さというより、いつも風が吹いている晴れた家、そんな風景が観られたのは貴重な体験です。

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