キャロルの初恋

キャロルの初恋

El Viaje de Carol

2005年2月16日 シブヤシネマソサエティにて

(2002年:スペイン:104分:監督 イマノル・ウリベ)

背景となるのは1930年代のスペイン内乱なのですが、舞台となるのはスペインの田舎の村です。

戦争を避けて疎開してきた家族に合流するため、母とニューヨークからやってきた少女、キャロル。

キャロルが出会う自然にあふれた世界の映像が美しいです。

今でもこんな自然に囲まれた所があるんだなぁ~と感心してしまいました。馬車でしか通れない道、堰が作られている小川、そんな風景の中でいつもひとり、という印象のある女の子です。

しかし、地元の男の子たちと喧嘩の果てに仲良くなって、特にリーダー格のトミーチェ(トミー)とは淡い恋心を抱くようになりますが、周りの大人たちは戦争のなりゆきを心配しながら見守っている、という様子です。

この映画で、キャロルは母が駆け落ちしてアメリカに行ってしまったとはいえ、金持ちのお嬢様なんですね。トミーたちは貧しい庶民という身分の違いが、服装や生活などからひしひしとわかります。身分の差がとても明確です。

キャロルのお母さん、お祖父さん、親戚たち・・・色々な大人の思惑も交錯して、なかなか自由に行動できないのですが、理解あるお祖父さんのおかげで、キャロルは比較的自由な生活を送れている、という状態です。

キャロルはどちらかというと男の子っぽいところがまだ残っている女の子で、着ている洋服もざっくばらんな格好がかわいらしくもあり、中性的な印象を受けます。手足がひょろひょろと長くて、いつも木に登っているし・・・

しかし、背景になっている政治、戦争の動きによって、その淡い恋などつぶされてしまう苦さ。キャロルの年代というのは全く何もわからない訳ではない、でも大人でもないという微妙な年頃なんですね。どちらかというと寡黙な少女、キャロルの茶色い目の力がとても強くて、「大人を見ている子供」の視線が痛いくらいです。

キャロルはいつも日記を持って歩いています。それは、一番親しいお祖父さんにも見せない、秘密。でも、トミーにはちょっとだけ見せます。そして自分の胸の内をそっと教える。

日記というものはそういうものでしょう・・・誰にも見せない自分だけの世界。

最近日記をウェブで公開するというのが流行ですけれども、本来日記というものは自分の胸の内を密かに語るもの、そうそう知らない人に見せるものではありませんね。

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