20のアイデンティティー

20のアイデンティティー

Twentidentity

2005年3月10日 渋谷シアターイメージフォーラムにて(韓国インディペンデント映画2005)

(2004年:韓国:10作品 70分)

韓国映画アカデミーの創立20周年を記念して、卒業生20人がデジタル短編を作った短編集。決まり事は<20>という数字に何かしら関係させること。

去年(2004年)の東京国際映画祭では、20作品全部上映したのですが、今回はその中から10本を選んで上映されました。

この韓国映画アカデミーの卒業生は、日本でも公開された映画の監督としてはホ・ジノ(八月のクリスマス、春の日は過ぎゆく)、ポン・ジュノ(ほえる犬は噛まない、殺人の追憶、三人三色の中のインフルエンザ)、イ・スヨン(4人の食卓)、キム・イソク(清風明月)、パク・キヨン(ホテル・モーテルカクタス、らくだ(たち)、ミン・キュドン&キム・テヨン(少女たちの遺言)など。(今回は上映されませんでしたが、チャン・ヒョンス(誰にでも秘密はある)、イ・ヒョンスン(イルマーレ)、キム・テギュン(火山高、オオカミの誘惑)など)かなりの映画人を輩出している映画アカデミーです。

本当の制限時間は5分以内ということだったそうですが、それをきっちり守ったのはパク・キヨン監督だけだそうです。パク・キヨン監督は現在、同アカデミーの院長を務めていますから、まぁ、先生だけが規則を守ったという・・・卒業生たちは結構自由にやってます。

その中でいくつか気に入ったものを・・・

①秘密と嘘:ミン・キュドン監督

20歳の今時の男の子にふりかかる災難。なんだかお調子ものの青年ですが、婚約者の母からいきなり迫られて・・・・のドタバタコメディ。継母の悩殺ぶりが笑えます。それに必死にあらがおう、いや、迫力に飲まれそう~という青年のあわあわぶり。

若者、しっかりしなさい!って笑いながら言っているような、オチがまた楽しい。

②Pass Me:キム・テヨン監督

バスに乗っている女性カメラマンが目撃してしまったカップルの道端大喧嘩。それをとても詩情的で微笑ましい視線で描いています。

③20歳:パク・キヨン監督

20歳らしい男の子が部屋にたたずみ、外に出る。それだけ、なのですが、部屋の中の様子、男の子のなんだか脆い憂いを秘めた表情だけで、「20歳の戦慄」を描き出しています。

④Fucked Up Shoes:ユ・ヨンシク監督

焼き肉屋さんの座敷に次々と上がっていくお客達の靴がどんどんたまっていく。靴が20足になるともうめちゃくちゃ。靴のめちゃくちゃを描いて、社会のめちゃくちゃを笑っているような、それでも妙にハッピーで明るい突き抜けた感じのある短編。

⑤20の質問:イ・スヨン監督

ちょっとホラーチック。失恋した若い青年が急ぐあまり道路に寝ている浮浪者につまづいてしまう。地下鉄のホームで追いかけてきた浮浪者にいきなり「20の質問をしろ!」と迫られる恐怖。そしてシニカルなオチ。とても視線が冷静で怖い。

⑥シンク&ライズ:ポン・ジュノ監督

全編ワンショットで撮られているゆで卵論争の行方。川辺の売店に来たみすぼらしい父と娘。娘はスナック菓子をほしがるけれど、父はゆで卵だと言い張る。それを聞いていた(日本のキネマ旬報なんかを読んでいる)店の親父が口を出し、「ゆで卵は水に浮くか、沈むか」の賭けにまで発展してしまう。

なんてことないことから、あれあれとヘンな方向に話が行ってしまう面白さと、会話の間合いの面白さ。そして意外な展開。最後の父娘の走り方がなんとも、ちゃっかり皮肉に満ちていてアイディアとタイミングが絶妙。

短い時間にこれだけのことが出来るってやっぱり凄いですね。感心。

私が一番好きなのは最後の『シンク&ライズ』なのですが、機会があったら是非、他の10本も観たいと熱望しています。

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