オオカミの誘惑

オオカミの誘惑

Romance of their own

2005年3月7日 文京シビック大ホールにて(試写会)

(2004年:韓国:115分:監督 キム・テギュン)

ごく普通の女の子が、かっこいい年下の男の子から慕われる・・・というのは少女漫画の題材になりそうな少女の夢。

しかも、慕ってくるのが1人ではなく2人→2人ともかっこいいだけでなくちょっとワル→ワルだけれども2人とも純粋→純粋だけれどもめちゃくちゃ喧嘩が強い→強い2人に競うように守られて、慕われる・・・という追い打ちのかけ方に感動すら覚えますね。

原作は17歳の女の子がインターネット上で発表して人気の出た小説だそうですが、脚本、脚色、監督は、究極の喧嘩映画、『火山高』のキム・テギュンです。

ですから、べたべたした甘い部分は極力避けて、映画も冒頭いきなり、隣り合う高校生同士が対決して大暴れだ!!!っていう所がさばさばしていていいのですね。

たまたま田舎からソウルに出てきた主人公ハンギョンが、その真ん中にはさまれてしまって、2つの高校生グループの各リーダー、へウォン(チョ・ハンソン)とテソン(カン・ドンウォン)と出会って「見初められてしまう」というテンポ、はやい。

回し跳び蹴りをかますへウォンに対して、壁にキックしてドロップキックをきめるテソン。(これが2人の得意技だ!)

『火山高』ではワイヤーアクションや特撮を駆使して喧嘩を派手にやっていたのに対して、今回はノーワイヤーでスタントなしで、喧嘩をスポーティに撮っていて、外見がかっこいいだけではなく、運動能力も発達している若者をかっこよくしつこく撮るということにかなり力入れているとみました。(実際、男優2人は撮影で肩脱臼と骨折をしたらしくて、あ、ここで脱臼~~というのがよくわかったりします)

日本でも先日『パッチギ!』という喧嘩映画があったのですが、この『オオカミの誘惑』には『パッチギ!』にあった照れというものがありません。前半は好きになったらどんどんアタックするのみで、後半は照れというより正義感から言えない、言わないという展開になります。この全体を貫く韓国映画らしい、正義感というのがこの映画の魅力。喧嘩も仲直りも正義感ゆえ、という清潔感漂う目線ですね。悪意というのは上手く避けています。

へウォンとテソンの間にはさまれてしまって、どちらも捨てがたい(?)という羨ましい女の子、ハンギョン役のイ・チョンアという女の子が「ごく普通の女の子」という風貌をしているのがいいですね。しかし、だんだん映画が進む内に、ハンギョンの中にあるちょっと男の子っぽい潔さとか、誠実さ、良識というものが全面に出てきて、2人の男の子が何故ハンギョンのことを好きになるのか・・・ということにリアリティと説得力を持たせています。美人美人した女の子だったらこの物語は逆に成立しないでしょう。

ハンサムな彼氏に美人の彼女だけではない、アンバランスな面白さというものがあるのです。

正義感つっぱしり少年にはその正義感をセーブする誠実な女の子がよく似合う。

それは、ストーリーが硬派な喧嘩を描くかと思うと、甘いラブ・ストーリーが交互に描かれて足して2で割って丁度いい具合になりました、という手加減がいいのですね。

『火山高』では喧嘩を派手にやりすぎてついていけないという声も聞いたのですが、そういう意味ではとんがった部分が丸くなっておさまりがよくなっています。

ラストの余韻も甘くても、ちょっとユーモアがあって切なくて、喧嘩恋愛青春純愛映画という要素てんこもりだったな、と後になってから気づきました。

しかし一番、気に入っているのは、おきまりのようになっている大雨の中での大喧嘩の元気さですね。みんな若いねぇ~。

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