ダブリン上等!
InterMission
2005年3月2日 シブヤ・シネマ・ソサエティにて
(2003年:アイルランド=イギリス:102分:監督 ジョン・クローリー)
これは群像連鎖劇ですね。
アイルランドのとある街のスーパーでレジのかわいい女の子に甘い言葉をささやいて・・・ガツンと一発、レジの金を奪ってしまう、「やんちゃはおしまい」なはずのチンピラ、レイフ(コリン・ファレル)。
ささいなことで喧嘩別れしたジョンとディドラ。ジョンの職場の同僚で女にもてないことを異様に気にしている男、オスカー。ディドラの妹は男性不信で身なりかまわず口ひげが生えてもひらきなおっている「口ひげ」サリー(『ハリー・ポッター』シリーズや『家族のかたち』のシャーリー・ヘンダーソン)。
ケルト人を誇りにして、1人意気高らかな刑事ジェリーはレイフを目のかたきにしている。そんなジェリーをドキュメンタリーにして退屈なテレビ番組製作から離れたいと思っているTVディレクター。サリーと母が乗ったバスの運転手、ミックは家庭思いの働き者なのに、イタズラなガキが石を投げたことでバスが横転・・・失業に・・・・他にも色々な人が出てきては、衝突という人間喜劇です。
色々な人の話がもつれあってそして、ひとつにつながるラストまで・・・疾走感バリバリというよりも、「素直になれない」「思いこみで誤解してしまう」「上手い具合に言いくるめられてしまう」「自分1人でどうにかしようとする」・・・といった回り道をみんながみんなあちこちに走り回っていて、時々衝突して、また走って・・・という独特のテンポがいいですね。早いのか、のろいのか・・・よくわからないのです。
レイフの希望(一応ね)は、「まともな職について自分の家を持って、キッチンには中華鍋とジューサーがある」ということなんですが、全くそんな気ないような行動でも、人の家の中に入ると「お、中華鍋とジューサーがあるな!」なんてしっかりチェックしてたり・・・
ジェリーという刑事が、やたらケルト民族を誇りにしていて、ケルト戦士気取り・・・でもとっても小人物という皮肉と、ジョンとオスカーが働くスーパーのオーナーが、何かというと「アメリカでは・・・」とアメリカ人気取りの嫌な奴なんですが、私は、日本でもスポーツとかで大和魂だとか、大和撫子だとか、サムライ・スピリットとか・・・都合のいいときだけ旗を振り回すのが嫌いだし、身も心もアメリカ人で、何かというとアメリカ、アメリカとか言うコンプレックス丸出しのアメリカ人気取りが嫌いですね。
良く言えば、祖国愛とインターナショナルな目ということで、相反することなんですけれど、自分をわきまえず、気取っているいやらしさという点は同じなんです。
監督や脚本は同じこと考えているのだと思います。この2人は結局、その気取り屋の仮面がはがされてしまうのですから、そこら辺は爽快です。
しかし、この群像劇のきっかけとなるのは赤いパーカーを着たガキですね。いい人にも気取り屋にも、平等に悪さして大人を追い込むという手口は同じなんです。それでもラストはきちんと丸くおさまってしまうから、人物整理とキャラクターの描き分け、きっかけの子供の出てくるタイミングとそれから起こるハプニングの数々なんか最後の最後の尻尾までとても手際がいいです。
大作ではないのですが、とほほな人々の手際のいい群像喜劇、アイルランドの風景などもとてもきちんとしていて、独特な個性がありますね。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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