レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語
Lemony Snicket's A Series of Unforturate Events
2005年4月25日 新宿厚生年金会館にて(試写会)
(2004年:アメリカ:109分:監督 ブラッド・シルバーリング)
世の中っていうのは不条理なものです。
突然の火事で両親を失ったボードレール三姉弟妹は、親戚に預けられるのですが、莫大な遺産をねらうオラフ男爵(ジム・キャリー)に目をつけられて、つけまわされるのをかわしていく子供たち。知恵と勇気があっても、どんどん状況は不幸せになっていく。
冒頭、作家で語り手であるレモニー・スニケット(声のみの出演、ジュード・ロウ)が、「楽しい映画を観たい人はすぐ他の映画館に行くことをお勧めする。これは不幸な物語であって私の仕事は記録すること、ハッピーエンドの捏造ではない」と子供の本にありがちな、努力すれば報われるという説教じみたことを一切、切り捨ててしまっているのがまず、面白いです。
ジム・キャリーが『エターナル・サンシャイン』で見せたナイーブな普通の人とうってかわって過激なキャラクター。
悪者というより鬱陶しい奴、なんです。もう~ごてごてに鬱陶しい。私も嫌だ、こんな大人。だから逆に毒のある悪者というより、ああ、うんざりだよ・・・こんな奴・・・という微妙な役になっているのです。目がぐりぐり動くところなんて、とほほ笑いが。
そんな役を喜んでいるように見せるジム・キャリー、やっぱり芸達者。オーバー・アクトと一口で言っても『バットマンフォーエバー』のリドラー役との違いなんか考えると芸の巾が、とてつもなく広い人なのです。どんなに変装しても、すぐに「オラフ男爵!」とわかってしまうのに、全然、気がつかない、銀行家ポー氏(ティモシー・スポール)のオマヌケぶりも良い味だしてます。
ジム・キャリーに負けていないのが、メリル・ストリープ。コスプレ三昧のこれまた鬱陶しい伯母さん。子供たち、次々と現れる「やな大人」にうんざり。その構図が面白いのです。
そしてセットや色使いがもうとにかく凝っています。大がかりな特撮、というよりも、ちまちまちまちまとしたところに妙に力入れて凝り、車や次々に出てくる家、屋敷の中、小物、衣装・・・ダークな色合いで、米粒に鼠の絵をちまちま~っと描いてます、という凝り方が、また、一体どこの国のいつの時代かわからないようなオリジナリティがいいです。意外なカメオ出演もあります。
出てくるのも蛇だったり、ヒルだったり可愛げないものたくさん出てきて、楽しいお子様映画を期待するのは間違いです。
そういう天の邪鬼な凝り方というのが逆に私のツボにはまってしまった訳ですが。
3人の子供たちは、発明家、読書家、なんでも噛む・・・と個性を分担して、次々と襲ってくるちまちました不幸を乗り越えていく。
この3人、ヴァイオレット、クラウス、サニーが、お育ちよさそうで、賢そう。
エンドクレジットがまた凝っていて、ちょっとした紙芝居風。私はこの映画、とても好きです。独特な世界持っていますから。
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5月17日 新宿ミラノ座にて二度目
試写を観たあとに原作を一気に読んでしまったため、もう一回観ました。
原作は、一巻目がまだ予約回って来ないので2~8巻まで読んだ訳ですが、語り手で、シルエットでしか出てこない作者、レモニー・スニケットがとても重要な鍵です。
だんだん作者が物語に絡んでくるような気配を見せるのです。映画には出てこないけれど、レモニー・スニケットにもオラフ男爵と同じ刺青がある、また、スニケットという名字の人物まで出てきます。
2回目は、細かく凝っているところ改めて観て、感心しました。
作者、ジュード・ロウは、原作のレモニー・スニケットの著者像そっくりのシーンが冒頭にあるし、最後はどこかへ旅に出る。腰にはあの「望遠鏡」があり・・と原作の世界をとても細かく描写していました。
あとジム・キャリーとメリル・ストリープの演技の凝り方。
オラフ男爵が、ボードレール三姉弟妹を呼ぶ時に、「ぼーどれぇぇぇぇぇーる」と「れ」の所で舌出して呼んだりするところ、本当に人を小馬鹿にしたキャラ、上手いなぁ。
ただし、ジョゼフィーンおばさんの手紙の暗号の謎ときは、映画では答えだけ、になっていました。原作では、クラウスが時間をかけて、暗号を解読するくだりがとても面白い。
最初と最後のアニメは手法が全然違うのですけれど、これがまた凝っていて見逃したら損。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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