いぬのえいが

いぬのえいが

2005年4月20日 テアトル新宿にて

(2004年:日本:96分:監督 犬童一心他)

「いぬのいる生活」11編を間に犬童一心監督の『ポチは待っていた』という話をはさみながらリレー式に短編で綴っていきます。

スポンサーや上司やタレントに振り回されて頭を抱えてしまうCMクリエイターが中村獅童。ドッグフードのCMをまかされても皆の意見を通そうとすると珍妙なものになってしまう。

そして、いきなり佐野史郎と渡辺えり子の濃いハチャトウリアンの「剣の舞」の曲に歌詞と踊りをつけた(振り付けは南流石)のミュージカルになっていて、度肝をぬかれてしまうのですが、だんだんテンポがスローダウンしていくような構成になっていると思います。

他にもアニメがあったり、色々な手法で次々と短編が繰り出されますが、バラバラ感、散漫感というのがないです。

きちんと短編ひとつひとつのカラーを統一している部分があって、全体として「いぬのえいが」になっているというまとまりの良さ。

各短編の出来の善し悪しはあるとは思いますが、犬を飼うということだけで色々な側面がある訳です。過剰な愛犬家あり、犬から見た人間観察あり、無責任に犬を飼うことへの警告、死んでしまうことの悲しみありで。

私は短いけれど田中要次さん主演の『犬語』が面白い発想だと思いました。オチも脱力もので田中要次さんならではの役かも。

犬が可愛い、好きだけでなく、意味なく吠えられて閉口する、という面をもってきたのが面白いです。

最後の『ねぇ、マリモ』はあざといといえばあざといけれど、上手いなぁ、と思います。私はこれが犬童一心監督の短編だと思っていました。

動物を飼った事がある人ならわかる、何故先に大きくなり、先に逝ってしまうのか・・・ということを流れるような手法で描いています。

あざといといえば、川平慈英のパートなどは、わざとあざとく作っていたりしますから、意図的なあざとさを楽しむ、という面もありました。

私は子供の頃から動物を飼っていたので、やはり死なれるのはつらかったのですが、よく、ペットは死んでしまうから飼わないという声も聞くし、それもよくわかるのです。

しかし個人的には昔、可愛がっていたペットの死は、死ということはどういうことなのか、を現実問題として身をもってわかるという貴重な体験だと思います。

テレビや小説や映画でどんなに死が描かれても、それはあくまでも第三者的な目であって、現実の喪失感に涙を流す経験というものは、別物です。特に子供の頃は。

むやみやたらと人を殺し、破壊するゲームなんか子供にやらせるよりも、一匹の犬とつきあい、先に成長して追い越されて、そして別れる、その命の実感を体感する方が大事だ・・・中村獅童のエピソードは特にそんな事を思わせるものでした。

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