ライフ・イズ・ミラクル

ライフ・イズ・ミラクル

Life is a Miracle/Zibot Je Cude

2005年5月31日 よみうりホールにて(試写会)

(2004年:フランス=セルビア・モンテネグロ:154分:監督 エミール・クストリッツア)

エミール・クストリッツア監督の映画というのは、とても個性的な自由奔放な想像力をきちんと映画にしてみせるということなのですが、今回は、1992年のボスニア紛争のある出来事。

ボスニアで紛争が勃発しても、動物たちに囲まれて鉄道を引く仕事にのんびりと出かける男、ルカ。鉄道は未開通なので、線路は道が狭くて少ない道路の替わり。線路が車も自転車もトロッコも線路を利用して通る道、なんです。

もとオペラ歌手の奥さんが喉を悪くして、転地療法でこの山奥の村に引っ越してきたのですが、息子はプロのサッカー選手をめざしている。

ルカは、仕事仲間と楽団をやりながらのんびり暮らしていますが、奥さん、浮気で出奔、しかもボスニア紛争で息子が徴兵されてしまった!!!

どんどん近づいてくる紛争。そこで敵であるムスリム人の女性サバーバと出会います。

線路を車でたらたら走っているとトンネルの出口で、ロバがど~んと線路をふさいでいる。

ロバは涙を流していて、「失恋して、絶望にかられて自殺するためにここに来たんだ」という事ですが、このロバ・・・映画の重要なキーになっています。

なにかピンチ!になると、ひょろり~ふら~とこのロバが現れるのです。ロバが奇蹟を起こしてくれる重要なアイテムなんです。

他にもルカの飼い犬は、もういつでもルカの周りを駆け回っているし、白黒で白い足袋をはいた猫も家にど~んとかまえ、卵の為にアヒルがたくさん家の前を歩いている。

紛争を描いているのに、妙にのどかのどか・・・です。

紛争は村まで迫ってきますが、どか~ん、どか~んという音だけで、実際の紛争のシーンはありません。

のどかさの裏にある紛争、または紛争でものどかに過ごしている人々。音楽はノースモーキング・オーケストラで、相変らず暗い音楽なんて演奏しません。いつでも明るいブンチャカ音楽。

でも、結構ルカとサバーバは、紛争が酷くなってから・・・酷い目に会う訳ですが、悲壮感というのが全くない世界。

セルビア紛争の細かいことを描かないけれど、わからないからついていけないということがない、というのがいいです。

あくまでもルカとサバーバの物語に焦点をしぼっています。だからとても観やすい映画になっています。

過去の『黒猫白猫』『アンダーグラウンド』に比べると強烈な個性を持つキャラクターが少ないのですが、その分動物たちが良い味だしています。大体監督の映画では、何かが空を飛ぶのですが、今回も飛びますね。

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