ニライカナイからの手紙

ニライカナイからの手紙

2005年5月26日 虎ノ門ニッショーホールにて(試写会)

(2005年:日本:113分:監督 熊澤尚人)

沖縄の離島で生まれ育った少女の沖縄映画というよりも、沖縄を故郷に持つ少女、風希(蒼井優)の20歳になるまでの一コマ、一コマという映画です。

6歳の時に東京へ行ってしまった母から毎年誕生日に手紙が届く風希・・・しかし高校を出て、母を訪ねて東京へ上京して、カメラマンの道をめざすという大筋よりも、いつもソフトなやわらかなフィルターがかかったような風吹いているような沖縄の風景の中で、東京の雑多な風景の中で、憂い顔をしている蒼井優の横顔がとてもすんなりとしています。

蒼井優は、沖縄万歳!でもなく、母のことはもう半分あきらめている、自己主張があまりない分、芯の強さは人一倍ある、という少女の横顔を淡々と見せる。そこがとてもいいのです。

沖縄いいところ、東京きたないところ、というちょっとワンパターン的な描き方をしていても、風希は東京で、厳しいカメラマン(斎藤歩)の元でしごかれても、あまり表情を出さず、愚痴も言わず、どこかを見つめている。

がんがん怒鳴られて、怒られて・・・・疲れ切った風希でも、写真を撮る小さな喜びを持っていればなんとかやっていけるのです。

この映画は小さな喜びと失望の繰り返し。

もう、沖縄に帰ろうかなぁ・・・とさすがに思っても帰らない蒼井優の芯の強さがこの映画の魅力。

弱い女の子ではないのです。一見弱そうな女の子の密かな強さ。

その辺をソフトに描くのは行定勲監督とか上手いのですけれど、岩井俊二監督の『花とアリス』でちょっと生意気なアリスを演じた蒼井優・・・今回は憂いを秘めた表情、蒼井優でなかったらちょっと苦しい映画だったと思います。

それだけ、風希=蒼井優、になってしまっています。

この映画の主題歌、永山尚太の『太陽ぬ花』という曲がいいです。沖縄風ではありますが、メロディアスでとてもこの映画の空気に合っています。『バタフライ・エフェクト』のオアシスの曲と並びます。

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