美しい夜、残酷な朝

美しい夜、残酷な朝

Three・・・Extreames/Three2

2005年5月26日 ヴァージンシネマズ六本木ヒルズにて

(2004年:香港=日本=韓国:124分:監督 フルーツ・チャン(香港)、三池崇史(日本)、パク・チャヌク(韓国)

去年観た『Three/臨死』の続編でした。

今回はホラー色よりも、グロテスクさ、ショッキングさ、残酷さ、がより濃い3本になっています。

ちょっと大袈裟に言えば、グロテスク王・フルーツ・チャン、バイオレンス王・三池崇史、復讐王・パク・チャヌク監督だ、とわかっている人はそれなりの覚悟で観て堪能できる世界です。

しかし、キャスト、長谷川京子、イ・ビョンホン・・・という理由で観た方は、(冷たいようですが)ご愁傷様。満足度は低いでしょう。それだけ、各監督の世界が爆裂しています。

①「Dumpling」(「餃子」):監督 フルーツ・チャン

フルーツ・チャン監督は、香港返還3部作(メイド・イン・ホンコン、花火降る夏、リトル・チュン)以降の『ドリアン・ドリアン』『ハリウッド★ホンコン』・・・とこの短編では、「食べるということを、欲望に直結させて描く」ということに力を入れているようです。

食欲は、本能のひとつ。そしてそれは性欲につながる・・・という視線なんです。

だから、食べ物が出てくるといっても、美味しそうなグルメなものなど出てきません。生きる為に、自分の欲望を満たすためにという、「食べ物」をモチーフにしてグロテスクな欲望の姿というものをありありと描き出します。

テレビでもネットでも・・・あらゆるメディアで美味しい食べ物情報があふれかえっていて、飽食気味なのに、まだまだ美味しいものが食べたい、食べたいという発言がどんどん出てくるのを、なんだかうそ寒く感じている私には、フルーツ・チャン監督の視線は、逆に納得いくのです。

この映画では餃子なのですが、女性を若返らせて、美しくさせる餃子を作る人がいる・・・という口コミからあるアパートを訪ねたもと女優。

美しくて、金持ちでも満たされなくて、餃子が何であるか知ってからもその自分の中からわきあがる欲望をもう理性が抑制できない。

クリストファー・ドイルはごちゃごちゃした部屋が好きだそうですが、この映画に出てくる部屋も狭くてごちゃごちゃしていて、乱雑。

そんな中で、餃子を食べる口のアップとか・・・赤いカーテンが重く下がっている部屋を独特のざらざらとした映像で見せてくれます。

短いながらも衝撃度は一番。餃子を食べる時の、あの音がすご~くリアルにべったり~としています。ずるり~

②「Box」:監督 三池崇史

『IZO』という映画であれだけバイオレンスばりばりにやってくれたから・・・と思うと青の映像で統一した静謐な世界。

謎めいた女性作家(長谷川京子)と密かに好意を持っている編集者(渡部篤郎)

しかし、女性作家はいつまでも、過去の世界から抜けられない。箱につめられてしまったような息苦しさ。

長谷川京子は一回も笑わず、憂鬱そうな、固い表情をくずさない。過去の忌まわしい記憶は箱に密封され、地下深くに埋められ、外に出ることはない、という閉塞感、よかったです。青いフィルター越しの雪原の風景の美しさと長谷川京子の眉間の皺が妙に美しい。

③「Cut」:監督 パク・チャヌク

映画監督、イ・ビョンホンが捲き込まれてしまった、不条理な復讐。

これはセットや美術、色使いが本当に凝っていて、独特で、強烈で、観る者を圧倒します。

しかし、『オールドボーイ』は、理由ある復讐なのですが、この短編の怖さは、復讐といわれても身に覚えのない事をどんどん、復讐だ~~~~復讐だ~~~~とエスカレートされてしまう所です。『復讐者に憐れみを』は、復讐せざるを得ない人々の復讐劇でしたから、さすが復讐王・・・

究極の立場に立たされて、究極の選択を迫られて、どんどんくずれていく、金持ちで高学歴で、今や人気映画監督の仮面。

イ・ビョンホンはノー・ギャラでこの映画に出たそうですが、根性あります。

スプラッタとは違う、美学に満ちた血、ブラッドの世界。映画監督の家のはずが、映画撮影のセットに変わっていたり、変な仕組みがあったり、復讐の手口の凝っていること・・・その残虐性というのは、人間の持つ残虐性をストレートに見せてくれるものです。

この3本は、映画を観る人が映画に対して何を求めているか・・・の試金石のようなものだと思いました。

ただただ、好きな俳優のお姿を見たいという浅い動機では、この映画の良さはわからないので、生理的に拒絶する人多いと思います。

この映像、ストーリーテリング、映画的な技術というのは大変すぐれています。しかも三種三様の映像技術がフル回転しています。

そこに気づくかどうか、という厳しさがあります。私は好きなんですけどね。こういう美しくて容赦ない世界。

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