聞こゆるや
2005年5月24日 イイノホールにて(試写会)
(2004年:日本:133分:監督 山田武)
去年の東京国際映画祭、リージョナルフィルムフェスティバルで上映された、熊本映画。
出てくるのも、石田えり以外は、オーディションで選ばれたという熊本の人たち。
少し『世界の中心で愛を、さけぶ』に設定が似ているのですが、あそこまでドラマチックではなく、熊本の空気や余白の余韻のようなものを大切にした映画でした。
今は東京に住む女性(石田えり)の手元に届いた20年前の当時の自分にあてた詩。
その詩が、「聞こゆるや・・・」で始まるのですが、この映画はほとんどが熊本弁で、少し聞き取りにくい所もあるのですが、この聞こゆるや・・・も「聞こえるかい?」といった意味の熊本弁。
となりあった学校同士で出会った慎一という高校生の爽やかな姿・・・と少し影のある女の子のささやかな恋愛。
それは光に満ちているようで、時には深い霧につつまれる・・・。
そしてやってきた突然の分れ。石田えりは、昔を懐かしむのではなく、熊本に久しぶりに戻って、20年前にすっかりタイム・スリップしてしまうのです。そして慎一が捲き込まれてしまったある事件の真相を初めて知ることになります。
それは、正義感の強いまっすぐな少年の気持ちを傷つけることになってしまったもの。
映画は、本当にゆったりと美しい風景を映し出します。学校の教室から見える花火も、路面電車が霧に包まれるのも、撮影の為の特撮ではなく本当の自然の風景を映したそうです。
話の展開がとてもゆっくりしているけれど、慎一の捲き込まれた事件というのが唐突でちょっと強引かもしれませんし、地元での上映ではこういう事件は快くないという意見もあったそうです。
しかし、映画が描きたかった、監督が意図したものは、映画の空気の余白の余韻でしょう。その余韻は十分に感じられる映画です。
更夜飯店
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