大いなる休暇
La Grande Seduction
2005年5月23日 銀座ヤクルトホールにて(試写会)
(2003年:カナダ:110分:監督 ジャン=フランソワ・プリオ)
接待というのは、気を使うものです。
親しい人を家に呼ぶのとは違って、自分、又は自分の会社の利益の為に、お客様や取引先を「楽しませる」苦労、というものを知っている人はこの映画しみじみと笑えるのではないかと思います。
カナダ、といっても人口125人のサントマリ島という小さな何もない島。ここでは漁業がすたれて島民のほとんどは生活保護で生活して、仕事がしたければ島を離れて、都会に行くしかない状態。
そこに、島にプラスティック工場誘致の話が!仕事が出来る!!!しかし、誘致には条件があって、人口が200人以上であること、島に医者がいること・・・なので、かなり強引なやり方で、若い医者を連れてきて、島に住んでもらおう!と、お医者さんの奇妙な接待合戦が始まります。
島を気に入ってもらう為のあれこれ・・・町長さんを筆頭に、まず、医者の電話に盗聴器をつけて、医者の好みを探ろうというところからして、かなり強引。
そして好みの食べ物が、レストランの人気メニューになり、クリケットが好きだと知れば、アイスホッケーが楽しみなのに、島民でクリケットの練習、釣りに連れていけば、おそろしく下手でも、ちゃんと大きな魚が釣れるように仕向ける・・・などなど次から次へと涙ものの接待が続く・・・中にはこれはやりすぎ・・というものがあっても島民、必死。
盗聴している内に、医者の恋人との会話などプライベートで大人の会話がわからなくて、ずれたことを堂々とやってしまうあたりが、こんな事したらばれちゃう!ってヒヤヒヤものもあり、「お金が落ちていたら嬉しい」という事から、ちゃんと毎日道に小銭が用意されてしまうとか・・・医者もだんだん、「なんか変だな?」って思ってくるあたりのゆるいけれど、しっかりしたペースの保ち方がとてもきちんとしていると思います。
しかし、町長さん達は、医者が喜べば喜ぶほど、自分達の仕事が得られると思う反面、騙している、嘘をついている、本当の事を最初から話していれば良かったのではないか?という良心の呵責に悩まされる、という「大人の悩み」がしみじみしています。
町長さんを始め、渋いおじさん俳優が出腹をゆらして走り回るあたり人生感じて、悲哀が漂っていますが、仕事しないで生活することの虚しさを話すあたりは、今時、キリキリ働くことから逃避しようという風潮の逆をついていてはっとします。
仕事があって初めて、休暇、というものが出てくるわけで、毎日が休暇だったら空しい、しかも生活保護を受けるというのは、とても屈辱的な事でかつては漁業でバリバリ働いていたことへの誇りのようなものも感じられます。
出来事をとてもユーモラスに描いているので、エピソードを拾っていくだけでも、楽しめるのですが、その底にあるのは「働くことの誇り」であって、働いて生活したことのないお子様向けではない映画でした。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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