初恋のアルバム~人魚姫のいた島~
My Mother, The Mermaid/人魚姫
2005年6月8日 池袋シネマロサにて
(2004年:韓国:111分:監督 パク・フンシク)
2005年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭グランプリ受賞。
・・・これは何故か・・・恋愛ものというよりファンタジックなタイムスリップ映画だからでした。
『スキャンダル』でペ・ヨンジュンにつけねらわれる未亡人、『ハッピー・エンド』でチェ・ミンシクの旦那を尻目に浮気しまくる妻、この映画の監督作品でもある『私にも妻がいたらいいのに』では、地味な学習塾の先生・・・・と出演するたびに印象の違う役をこなす、チョン・ドヨン、この映画では主人公と主人公の母の若き日の2役をやっています。この2役がまたまた別人状態だからほとほとチョン・ドヨンは凄いと思ってしまうのです。
現代の主人公ナヨンは郵便局勤めの女の子だけれども家に帰るとがめつくてきつい母と情けなくて母の尻にひかれている情けない父が嫌でしょうがない。
しかしあることから、ナヨンは済州島で父と母が出会った時代に紛れ込んでしまう。そこで見たのは海女として働く一人の少女と島の郵便配達をしている青年のいじらしい恋。
現代の母がコ・ドゥシムでインパクトあるんですね~~~~垢すりの仕事をしているけれど、所構わずか~~~っ、ぺっ!とツバを吐く、金にがめつくて金の為なら客とのつかみ合いもバリバリ、金をごまかす客の髪の毛つかんでひきずりまわす・・・怖い、絶対負けないぞ、母・・・。
ところがナヨンが済州島で出会った少女は気さくで、明るい、元気な海女さん。郵便配達の青年(パク・ヘイル)に毎日家に来て欲しくて、涙ぐましい努力をしていたり・・・そして学校に行けなくて読み書きの出来ない少女に文字を教えるようになる青年・・・それを複雑な思いで見守る後の娘。
子供からしたら親っていうのは生まれた時から大人であって、子供時代の話を聞かされても実感というのは持てない。
どうしても親と子の間に横たわる年月、時間というのは埋められないもの。
時間を飛び越える技、というものの見せ方が秀逸。実は、時間の飛躍が一番よくわかるのは母の弟(つまり叔父さん)なんですけれど。
島の風景や家のたたずまい、島に初めてバスが走る時の大騒ぎ。そして写真の使い方も上手い。チョン・ドヨン(母の方)のがに股でぱたぱた足早に歩く後ろ姿がいじらしい。島のおばさん達にかわいがられている郵便配達のお兄さん、というのも微笑ましい。
この映画の発想は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で既出なんですけれども、過去にさかのぼるのにデロリアンという装置は必要ない。
1カットでそこら辺を見せてしまうあたりが、映画ならではの手法・・・しかもお金かけずにさらりとさりげなく、でもとてもファンタジック。
若くて元気だけれどもだんだん現代の母の姿も重なるようになってくると、若い2人の行く末がわかっている側としてはすごく切ない気持ちになるのです。若き日の父を演じたパク・ヘイルの清潔感と誠実感がわかればわかるほど切ないです。俳優の使い分けがとても細かい。
それでも映画の視線は現代の両親の姿を否定はしていない。そしてラストシーンの人魚姫というタイトルがふさわしい美しいシーン。
ファンタジックな映画、ゆうばりファンタ、グランプリ十分納得です。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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