ライフ・アクアティック

ライフ・アクアティック

The Life Aquatic with Steve Zissou

2005年6月7日 恵比寿ガーデンシネマにて

(2005年:アメリカ:118分:監督 ウェス・アンダーソン)

フランスの海洋学者、ジャク=イブ・クストーの、海洋探検船「カリプソ号」で海の生物のドキュメンタリー映像『沈黙の世界』をわくわくして観ていた子供時代、またこのカリプソ号の探検はシリーズ本になっていて、それも愛読し、なおかつ・・・ジャック=イブ・クストーさんの写真をコピーして壁に貼っていた(恥ずかしい)中学時代。

まさかこの年になって、その世界が映画になって出てくるとは思いませんでした。虚をつかれた・・・・

この「沈黙の世界」は海洋生物だけではなく、クストー船長のもと、船員=科学者、カメラマン、録音など・・・のスタッフの家族のようなエピソードもたくさん入っていて、それにも憧れたものです・・・遠い目。

この映画って「沈黙の世界」の裏返しのような、舞台裏=メイキングを観ているような・・・それでいて、アドベンチャーあり、家族のようなクルー達の人間関係あり、ライバル海洋学者あり、海賊まで出てきて・・・・しかし緊迫感が全くないです。ゆるい、ゆるすぎ。

海洋探検船「ベラフォンテ号」の船長であり、海洋学者、海洋ドキュメンタリー監督のスティーブ・ズィスーのビル・マーレーはクストー船長の余裕の笑みも貫禄も全くなく、いつも仏頂面、無表情で、自分の船なのに自分の居場所がないような情けないような、ふてぶてしいような態度をず~っととり続けます。チーム・ズィスーは赤い毛糸の帽子とZのイニシャル入りのセーター、アディダスに作らせた(!)ロゴ入りスニーカー。

部下たちと海洋ドキュメンタリーの次回作を撮ろうとしたときに乱入してくるのが、ズィスーの息子だと名乗るネッドという青年(オーウェン・ウィルソン)や、取材意図がさっぱりわからない、しかも妊婦の雑誌記者(ケイト・ブランシェット)。

突然の息子の出現が面白くなく、嫉妬の感情をむき出しにする古株のクルー、クラウス(ウィレム・デフォー)船の上では、いつも青年がギターでずっとデビット・ボウイの歌の弾き語りをしている。

なんだかふざけているのか、真面目なのか、高尚なのか・・・よくわからないようでいて、実はこの色々な要素を見事に満たしているんです。

そして至福感にあふれたラスト。ゆるいようでもラストにかけてはぴりりと締めています。

ウェス・アンダーソン監督は前作『ロイヤル・テネンバウムス』で天才家族のばらばらを描いていましたが、今回もテーマは疑似家族。

絆の固い家族でなく、なんとなくばらばら感で、ゆるくつながっている家族達。それをまとめることができない(そういうことをもともとしない)船長。クストー船長とは大違いだけれども、やってることはほぼ同じ。ニヤニヤ。監督も「沈黙の世界」が大好きだと知って納得です。

海洋生物もアニメで作ってしまったり、船内の様子が玩具のような絵になっているチープ感が貧乏くさくないのです。なんだかんだいってちょっと上品。このギリギリ感がいいです。

クラウス役のウィレム・デフォー・・・・こんなにこの人の短パン姿を目にするとは思いませんでした。

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