私刑(リンチ)

私刑(リンチ)

2005年11月19日 東京国立近代美術館フィルムセンター大ホールにて(第6回東京フィルメックス・特集上映 監督中川信夫)

(1949年:日本:98分:監督 中川信夫)

『とび助冒険旅行』と同じ年に作られたものの、これは現代劇、しかもフィルム・ノワール、犯罪ものです。

全く違う素材、物語、世界を見せてもらいました。

昭和初期、やくざの清吉(嵐寛寿郎)はお加代と恋仲だったが、やくざを辞めたいと言った所、犯罪の罠にはめられ仏像を盗み、刑務所に。

そんな清吉を1人娘を育てながら待つお加代。そして戦後、清吉がかわいがっていたやくざの親分の息子、信夫(池部良)が戦争から戻ってくる。親と違って地道に靴直しの仕事を始める信夫はやはりかわいがってくれていたお加代と再会する。しかし、18歳になった娘(久我美子)は、父は刑務所の中にいるとは知らず、自由奔放に生きている。

そんな時、父、清吉が刑務所から出所した・・・まだまだ、盗んだ仏像をめぐって清吉はつけねらわれる。また、戦後の新興やくざと対立する信夫たち・・・父と再会した娘は?仏像の行方は?

昭和初期の雰囲気と、戦後の雰囲気(間の戦争は見事に飛ばしている)・・・時間の流れの使い方がとても上手いので、スムーズにつながって、波乱と犯罪と仏像の行方の謎、家族と・・・といった盛りだくさんの要素をぴっちり描いています。

やくざの儀式の数々の重厚さ、それから、犯罪をめぐる対決のシーン、特に、橋のシーンで、画面の半分以上を川を映し、下の方で人間が対決するといった大胆な構図が、時折はさまれ、目の離せないストーリー展開です。

私は観ていて、登場人物達がどうなるのか、はらはらしてしまったのですが、特に、出所しても、清吉に不気味につきまとう東野英治郎とか・・・渋い役者から、若き日の池部良、久我美子の美しさ満開!って感じの若い役者まで、巾の広い人間模様をなんて上手くつなげるのだろうと感心しました。そして若者~初老まで演じる清吉の嵐寛寿郎の粋で、まっすぐで律儀な気性というのが、品があります。

昭和初期、戦争直後の雰囲気というのも、車の使い方の上手さも(ドアノブのシーンは笑ってしまいました)私はまだまだ生まれていない前なのにとてもしっくりくるのが、不思議です。なつかしい、とまで思うのでした。

娘役の久我美子さんは、一応、「ぐれて不良になってしまった」という設定なのですが、ぴかぴかに清楚。池部良さんは本当に好青年、美青年。やくざの息子が地道で、やくざを抜けた者の娘がぐれてしまう、というちょっとした皮肉もいいです。

また主人公が正義のヒーローではなく、人生を棒にふってしまった転落者である、というのも「英雄」をどう監督がとらえているのか、といったセンスが感じられます。

一般大衆性が満載で観客を飽きさせない・・・そんな強弱のつけ方の上手さやストーリー展開のスムーズさとか、(今観ると)時代性とか・・・大変に面白く、かつ興味深く観た映画です。

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