エノケンのとび助冒険旅行

エノケンのとび助冒険旅行

2005年11月19日 東京国立近代美術館フィルムセンター大ホールにて(第6回東京フィルメックス・特集上映 監督中川信夫)

(1949年:日本:81分:監督 中川信夫)

今年の東京フィルメックスのオープニングの前に、フィルムセンターにて、中川信夫監督の特集上映が始まりました。

実質、これが私のフィルメックスのオープニング作品。

映画のわくわくがたくさんつまった映画でした。これが1949年に作られていたというのが驚きです。

京で人形遣いをしているとび助さん(榎本健一)が、お福ちゃんという女の子と出合った事から、頭を打ってしまい・・・・勘定が出来なくなってしまった。お福ちゃんのお母さんがいるという駿河の富士山の麓になる黄金の果物を食べれば、賢くなる・・・そんなことから京から駿河へとび助さんとお福ちゃんの旅の顛末。

冒頭、ナレーションの徳川夢声が「みなさんは、どんなお話がいいですか?お腹をかかえて笑えるような話?悲しくて涙が出てしまうような話?それとも身の毛がよだつような怖い話?それではそれが全部つまったお話をいたしましょう・・・」といった事を言います。

この「コメディ」「泣ける」「ホラー」この3つの要素が結局今でも、映画というものに求められるものと合致するっていう所からして感心しました。

映画はオール・セットで、紙芝居ロードムービーといった趣き。京~駿河といってもとび助さんとお福ちゃんの行く道は、さかしま町、死の谷といった道中。自然さというものを一切排した、作り込んだセットを次々と展開してみせてくれて、正に紙芝居そのもの。

ここに出てくる「怖いもの」というのは、かわいらしい、憎めないものが多くて、人食いクマは赤べこみたいにかわいいし、恐ろしい毒キノコは布団みたいだし、穴の中の土蜘蛛の精は、狂喜の躍りをえんえんと踊るあまり、とび助さんとお福ちゃん、楽々と逃げられるし、吊り橋でカエルの化け物が迫ってきても、ぽこんってたたくとあれぇ~って落ちちゃうし・・・

笑うことの出来ない女の子、お福ちゃんの可愛らしさ。ろくろっ首になってしまう所で、「お福ちゃんや~」「あいあい~」っていうのは、本当は見せ物小屋に売り飛ばされてしまったお福ちゃん、という怖い事なんですが、なんとも可愛らしさの方に目がいってしまいます。

しかし、このセットの凝り方って、よくよくみると凄いものがあります。地下に落ちる時、木の根がはっているのをきちんと綺麗に下まで見せたり、不思議の国のアリスばりの鍵が出てきたり・・・アイディアの泉みたいな気もします。

エノケンこと榎本健一のとび助さんは、オーバーアクトであってもいやらしさが全くない、自然さがあり、コミカルなくるくる変わる表情は、他の誰に出来るのでしょう・・・大人顔負けのクールな賢いお福ちゃんとのコンビネーションが、素晴らしいです。

寓話的な「お話」であっても、そのタイミングとか、話の回転のさせ方、見せ方などは、もう「映画を作り慣れた人」の作った世界。

最近の映画は大人も子供も楽しめるようになっている・・・なんて思っていたのですが、もう1949年にありました。それが発見出来た経験が一番です。

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