探偵事務所5” 5ナンバーで呼ばれる探偵達の物語

探偵事務所5” 5ナンバーで呼ばれる探偵達の物語

2005年12月13日 池袋シネリーブルにて

(2005年:日本:132分:監督 林海象)

ダンディズム

おしゃれ、伊達好みのことをいう。18世紀末から19世紀初頭の英国に端を発し、清潔・控えめ・優雅をモットーとしたボー・ブランメル(Beau Brummel)やロマン派詩人バイロン卿(Lord Byron)たちダンディ(dandy=伊達男)のライフスタイルで、フランス上流社会で流行した。(資料:文化出版局「ファッション辞典」より)

林海象監督は、永瀬正敏主演の『私立探偵 濱マイク』シリーズから、ずっとダンディズムを追求してきたと思います。

探偵という職業をダンディズムで表現する。

本当の探偵というのは、もっと地味で、地味な活動をしているのでしょうが、林海象監督の映画に出てくる探偵達は、皆、ダンディズム・・・清潔、控えめ、優雅、粋、おしゃれ・・・を追求した虚の世界の人々。だからあまりリアリティや生活臭はないのです。

しかし、虚だから、何をやってもいい、という訳ではありません。そこには、過去の探偵ものやハードボイルドへの深いリスペクトが感じられなければ成り立たないし、それを楽しむ余裕が観客には必要なのかもしれません。ダンディな遊び心を満喫する。

映画3作、テレビで濱マイクを演じ、その前には、林海象監督プロデュースの「アジアン・ビート」(主役、永瀬正敏とその大まかな設定だけでアジア6カ国の監督にそれぞれの感性で映画を作らせたというプロジェクト)で濱マイクの前身であるTOKIOを演じた永瀬正敏は今回は脇に回っています。でもやっぱり永瀬君は出てくれなければ・・・。

この映画の主役は、川崎にある由緒正しい探偵事務所5。ここでは、優れた探偵がたくさん所属し、名前は呼ばれず5で始まる3ケタの番号で呼ばれる。そこに採用された新人探偵591(成宮寛貴)と、浮気専門のベテラン探偵522(宮迫博之)が、前半、後半と分れますが、ひとつの事件を追うことになる、というもの。

探偵へのこだわりは、まずファッション。黒の帽子、黒のスーツ、メガネ・・・・これではいかにも探偵です、という風なのですが、それが堂々と調査しているのがまず、レトロな探偵ファッションが現代の街を歩くという虚の世界。車はスバルです。

新米の591は、きっちりとしたまだ着こなしていないようなスーツに比べ、522は、黒のスーツを裏返すと青のジャンパーになる。

帽子も522になると黒の皮の鳥打ち帽。同じ黒の洋服でも個性が出てくる。

2人ともメガネは伊達ではなく、ちゃんと度が入っています。

また1人1人の部屋の違いも楽しい。レトロな電話機に、細かい仕掛け。建物自体もとてもレトロなムードがいっぱいです。セットにとてもお金と時間をかけたそうですが、よく出来た世界。

探偵七つ道具の凝り方。ちょっとバカバカしいような小物の数々が、どんどん活躍するのも楽しいです。

しかし、探偵という職業の厳しさも描かれます。調査はするけれども、犯罪として認められたら、警察にゆずらなければならない歯がゆさ。

そこら辺、新米探偵591は、背伸びをしているから、ベテラン522とは違う・・・そんな対比のさせかたもひとりでダンディズムを背負って立っていた濱マイクとも違う描き方です。濱マイクは、横浜日劇の映写室の裏に1人事務所を構えていましたが、今回は組織で動く。しかし、組織といっても、緊急事態以外は、助け合わない・・・一匹狼の集まりのようなドライさもいいです。

私は知らなかったのですが、6ナンバーは女性探偵達の物語、また他の5ナンバーの探偵達のテレビやウェブ・ムービーも作っているというから林海象監督の探偵へのこだわり、というのは徹底しています。

話はちょっとずれますが、昔、勤めていた会社に出入りしていた業者さんで、前は興信所にいたんです、という人がいました。

詳しい話は聞けませんでしたが、仕事柄、人に会うと最初の一目で話さなくてもその人がどんな人が大体わかる・・・と言っていたのを思い出しました。

0コメント

  • 1000 / 1000

更夜飯店

過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。