パープル・バタフライ

パープル・バタフライ

Purple Butterfly/紫蝴蝶

2005年12月1日 新宿武蔵野館にて

(2003年:中国=フランス:128分:監督 ロウ・イエ)

ロウ・イエ監督の『危情少女嵐嵐』は、中国初の本格的なホラーということでしたが、ホラーというより、怪しいムードがいい映画でした。

ホラー映画以外の映画も観てみたい、と書いていたのですが、やっと次作が公開されました。

まず、この映像の質感・・・・というものにうっとりします。

時代は1930年代の中国、上海。日本軍が侵攻してきて、危うい空気、危険な空気が流れ出している・・・という雰囲気の出し方・・・映像の質感みたいなもの、がセピア色と灰色の中間のような色づかいでかなり大胆な撮影をしています。

日本人の通訳、伊丹(仲村トオル)と中国人女性、シンシア(チャン・ツィイー)のささやかな恋愛も、戦争の勃発により引き裂かれてしまう。

また、婚約を約束したスードゥ(リウ・イエ)とイーリン(リー・ビンビン)も、スードゥが列車の中で、まちがえて上着を着てしまった事から、抗争に巻き込まれ、イーリンは流れ弾にあたって死んでしまう。

伊丹は、戦争に行って諜報部員になって、シンシアと再会するものの、シンシアはディンホエと名前を変えて「パープル・バタフライ」というレジスタンス組織の重要なメンバーになってしまっている。敵と味方になってしまった2人。そして、誤りから2人につけねらわれるスードゥ。

この仲村トオル、チャン・ツィイー、リウ・イエのアップが、とても多いのと、雨のシーンがとても多い映画です。

雨は時には容赦なく降り、または、近寄れなかった恋人たちを近づける役目もする。

大きな歴史のうねりに飲み込まれてしまったような3人の表情を、カメラは容赦なくとらえる。その視線は、まるでドキュメンタリーで取材をしているかのような迫り方。この迫りくるカメラに耐えた3人の実力というものをひしひしと感じるのです。

映画は、時代的、舞台的に反日運動を描くことが多いのですが、それは実は昔のことだけでなく、今も続いている事ですね。

それを、メインの3人が「善」「悪」と色分けしないであくまでも、葛藤に悩み、流されていくことに反発を覚えながらも、どうすることも出来ない3人という風にとらえた視線がいいです。

チャン・ツィイーは、綺麗な役でもないし、アクションもしない、歌も歌わない、踊りもしない・・・でも質素な身なりでも、芯の強い女性を凛として演じていたののがとてもいいですし、仲村トオルの存在感は、最後までそのテンションが切れることはない、リウ・イエの焦燥感にとぎすまされた表情も観る者を圧倒する。

なにが悪者か、そんな事を描いた映画ではないのですが、映画は歴史的事実をきちんとふまえています。それは、今、この映画を観ている人がしっかりと受止めるべき事だと思います。

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