愛してよ

愛してよ

2006年1月17日 渋谷シアターイメージフォーラムにて

(2005年:日本:107分:監督 福岡芳穂)

このタイトル、いいですね。やたら今、世間に「愛」という言葉が安直にあふれている中、「愛してよ」という命令なのか、嘆願なのかわからない曖昧さ。

「愛してよ」と叫んでいるのは、自分の子供・ケイジをキッズ・モデルにしようとかなり強引に振り回すシングル・マザー(西田尚美)なのか、内心嫌々ながらも、そんなママを観察していてつきあってあげている、息子、ケイジなのか?どちらともとれます。

ママの口癖は「人生はくじ引きの連続」

はずれくじを引かない=自分が損しない、嫌な思いをしない・・・そんな自己中心な願望につきあわされる子供、悲惨です。

元夫が、息子を愛してる・・・なんて言うと「じゃあ、私のことはいったい誰が愛してくれるの?」と息子に言い放つ。

シングル・マザーとして1人で働いて、はずれくじ引いてきた私の人生やりなおすのだわっとかなり無理する母でもあります。

その辺の「嫌な女ぶり」っていうのが西田尚美、ギリギリの線で上手いです。

息子も嫌なら嫌って言えばいいのに、言わない。それはやっぱり母が好きだから。母に愛されたいからだと思うのです。

好きでもないキッズ・モデルのレッスンや習い事、オーディションにそれなりに応えて行く。

そんなオーディションで出合ったのが、デザイナーの女性。物を作る、仕事をする、自信を持つ・・・そんな堂々とした姿に比べて、自分の母はなんて小さいのだ、と気づいた時のがっかり感、そしてキッズ・モデルで出合った他の子供たちとの交流やいざこざ(これ、かなり年上の美男モデルが実はコンプレックスの塊で、ケイジに嫉妬するというのも妙に皮肉)で、母が思っている以上に子供は短い時間で成長をしてしまっているという過程がとても丁寧です。

そんな勝手ママだって愛されたい。誰も嫌われるよりも好かれたい。でも、それだけでは世の中やっていけない。嫌われても、それに耐えて自分の道をたどっていかなければならないのだ、という結果が母と子が同時で同じでなく、ずれているのがいいですね。

この映画は、新潟でオールロケーションされた新潟映画です。

おととしの東京国際映画祭のリージョナル・フィルム(日本映画の地方をロケした映画を集めたもの)で新潟映画として上映されているのですが、肝心の新潟よりも先に東京でひっそり公開されているっていうのがもったいないですね。

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