スクール・デイズ School daze

スクール・デイズ School daze

2006年1月9日 テアトル新宿にて

(2005年:日本:102分:監督 守屋健太郎)

私は、子供の頃から学園ドラマは見ませんでした。

『3年B組金八先生』の一番最初の頃、中学生だったのですが、周りが皆見ていても私は見る気になりませんでした。

その前にも色々と学園ドラマというものはあって、『中学生日記』とか・・・どうしても、「学生の自分」と「ドラマの学生」に違和感を覚えて、すんなり入り込めなかったのですね。こんな先生いない、こんな学校ないよ・・・という醒めた中学、高校生でした。

今も、やっぱり自分の実際知っている世界がドラマや映画で描かれると違和感を覚える事の方が多いです。

ドラマや映画で作る・・・のだったら、もっとしっかり作ってくれよ、いい加減に作って、知らない人から変な先入観持たれるのが嫌だな、ですね。

ドラマに出てくるOL・・・なんていうのが一番の例。こんなOLいません!ってOLであふれてます。

子供の頃から、自分の姿を虚像にだぶらせて、はしゃぐことが出来ない体質?なのかもしれません。作り手がリアルにしようとすればするほど、ほど遠いものを感じます。

むしろ、うそっぱちですよ、と開き直っている方が笑えます。リアリティが笑えるくらいデフォルメされていれば感心します。

例えば、『下妻物語』のモモコとイチゴの2人の女の子とか。

この映画を作った守屋監督って、私と同じ感覚なのかなぁ、と思いました。

映画の主人公、相沢晴生(森山未夾)君、高校生・・・は、逆にドラマに入りこんでしまい、現実とドラマの区別がつかなくなってしまうのです。

ドラマに洗脳されてしまったかわいそうな高校生です、途中までは。

相沢晴生君は0歳から子役として活躍したものの、今は普通の高校生。

子役時代は、世間の注目の的だった子供も、今ではいじめられっ子の高校生です。ステージママだった母親は、だんだん壊れていく、父親は浮気して家庭を顧みない。

学校では、同じいじめられっ子のカメラ小僧、佐治(金井勇太)が、同病相憐れむ状態。

そんな晴生は、人気学園ドラマ『はみだし!スクール・デイズ』のオーディションを受け、合格。ドラマでの高校生と、現実の高校生・・・二面持つようになる。

ドラマでは、「いじめられっ子」の役を振られ、「いじめられっ子の演技にリアリティがあっていいな・・・」などと、言われる始末。

なんとか自分の位置を見つけたいと思うあまり、もっといじめられたら、ドラマにどんどんそれが活かせる、なんて病的な事を考えるようになってしまいます。

タイトルのデイズはdaysではなくて、daze。つまり目眩。目眩を起こしてしまった晴生は現実の学園生活でも、ドラマの熱血先生(田辺誠一)の姿が見えるような錯覚に陥ってしまう。

森山未夾くんは、本当にリアルな高校生を演じるのと、ドラマの中の虚像の高校生を演じるのと、子役とはいえ役者根性に燃えて、1人一生懸命になる健気さ・・・色々な面を目一杯演じていて、器用な役者さんですね。

もともとはダンスが得意で、ミュージカル舞台から出発しているように、映画の中でも妄想で『フラッシュ・ダンス』を踊る、という器用さ。

役者もクセモノ揃えています。

ドラマの先生役は、明かに金八先生のパロディ・・・で、田辺誠一。国語の教師なのに何故かジャージ。ドラマの監督に田口トモロヲ(脚本家は寺島進)、実際の学校の教師は松尾スズキ、母にいとうまい子、父に鶴見辰吾(金八先生では、中学生で父になってしまう役をやっていましたね)・・・そして、子役時代の晴生を褒める人で(なんと)鈴木清順監督を出してくるという・・・凝り方。

原作は相沢晴生・・・となっていますが、実はオリジナル脚本です。本当に相沢晴生なんて役者さん、いたっけ?と観客を惑わす遊びに満ちています。

所詮、ドラマの中の世界はドラマでしかない・・・という撮影現場の裏側も見せながら、1人の高校生が成長する姿をかなり皮肉で冷静でありますが、やさしい目で見つめています。同じいじめられっ子の金井勇太の役なんてトリックスターです。

テレビというとても身近な所に潜んでいる目眩を冷静に見つめて、遊び心一杯で、それでいて、リアルな所はリアル(いじめの所が、もの凄く子供っぽくてしつこいあたり・・・)、切なくて、可笑しくて、特撮の使い方なども細かいこだわりがあって、学校生活っていうのは、本当にdazeなんだ・・・って、今更ながら気がついてしまいました。

ちなみにこの映画のパンフレットには、この映画でパロディにされている過去の学園テレビドラマの細かい説明があって、映画の後に読むとますます作り手の深さに気がつきます。

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