プルーフ・オブ・マイ・ライフ

プルーフ・オブ・マイ・ライフ

Proof

2006年1月26日 スペースFS汐留にて(試写会)

(2004年:アメリカ:103分:監督 ジョン・マッデン)

原題は'Proof'(本当は数学の平方根の下にproof)

舞台が原作だそうです。

シカゴ大学の数学教授(アンソニー・ホプキンス)の次女、キャサリン(グイネス・パルトロウ)は、父と同じく大学で数学を学んでいる。

父は精神を病み、認知症とも言えるのを、介護する為に大学を休学して、家にとじこもりがちになる次女。

長女はニューヨークで働いていて、姉妹の仲は悪い。

そんな父が亡くなった・・・喪失感と虚脱感で動けなくなってしまう次女の所へ、父の助手だった数学者ハル(ジェイク・ギレンホール)が現れ、父が残したノートに、世紀の大発見とも言える数式の証明が綴られているのを発見・・・・

父が亡くなるととたんに現れてあれこれ口を出し始める姉。

えらく地味な映画です。

なんせ数学の証明問題を証明する話ですから無理はない・・・グイネス・パルトロウもジェイク・ギレンホールも、綺麗な格好なんかしない。

あえて汚い格好しかしないのか・・・ってくらい小汚い。

しかし、そんな2人が証明しなければならないもの・・・は他にも出てくるというミステリ要素もあります。

いかにもキャリアなスーツに身を固めた父や妹とは離れた世界に行ってしまった俗っぽい姉。

ニューヨークで働いていることを鼻にかけ、自称、ニューヨーカーの俗物丸出し。

しかし映画は、時間軸がくるくるとかわり、はい、ここから回想シーンですよ、という丁寧な説明なくいきなり過去に飛んだりします。

そこでは、天才なのか、精神の病なのか、老いなのか・・・わからない父の存在がある。

舞台も地味だったろうなぁ~と思う登場人物の少なさ。

でもその分、1人1人の役者への視線は大きくなりますから、俳優としては、腕の見せ所。

私は姉が良かったですね。どこにでもいるんだ、こういう人・・・悪い人ではないけれど厄介な人。 自分の価値観を正義とばかりに押しつけてくる人。

グイネス・パルトロウは、『ロイヤル・テネンバウムス』『シルヴィア』・・・そしてこの映画と「頭の良いあまり幸せになれない女性」というのが上手いです。

それは何故かと思ったら、きりっと薄くてまっすぐに結んだ唇。

いかにもかわいい・・・というぽってりした唇ではなく、「私は!私は!!!!」と言いたくても言えなくて、悔しさで涙が出そうな気持ちを辛抱している、薄くてまっすぐな唇。

グイネスがジェイク・ギレンホールに、投げつける台詞は「何の才能もないくせに。23歳の脳が一番よく働く、でも26歳で脳は下降線をたどってるなんて、そんな脳はもともとないくせに!」

こんなやりとりの連続であり、それを受止められるか、受止められないか・・・そこがまたミステリです。

つらい苦しい気持ちのぶつかり合い、情緒不安定、向上心と諦めの境目をふらふらするプライド。そんなものがみっしりつまっている感じ。

地味な映画ですが、シカゴという街の映画であり、季節感、冬の寒さなどがよく伝わる映像、知的で、繊細で、人間の感情の起伏を丁寧に描いているところがとても好きです。

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