FROG RIVER
2006年1月2日 DVDにて
(2002年:日本:86分(全4話):監督 伊志嶺一)
これは劇場公開作品ではなくて、石井克人監督らによるGrasshoppa!のビデオ・マガジンにいわば、連載されていたような・・・それを漫画だったら単行本になりました・・・という形で一つのDVDに全4話が納められたものです。(かなりレアな一品)
とはいえ、映画界で活躍している人たちによる、「映画」として十分楽しめます。
原案は石井克人監督で、監督、美大生時代をモチーフにしているとか・・・石井監督もいきなり、中古レコード屋の客になって出てきます。
美大生のイメージというと・・・・一番が「体育会ではない」ということなのですが、主人公の国分寺に住む美大生、ツトムを演じる加瀬亮という人は本当に「スポーツとはほど遠い人」なんです。
かなりさえないツトム君は、ハウスミュージックが好きで、小倉一郎が店主をしている中古レコード屋、「珍屋」でバイトしています。
ツトム君の唯一?の楽しみはアパートにクラブ用ミキサーを完備していることと、そして大学の「水野さん」という女の子に夢中。
映画では登場人物は、皆、そのキャラクターを現すロゴの入ったTシャツを着ている(ツトム君だったら「美大」「ハウス」「ウーレイ」など)のですが、水野さんは顔は見えず、胸に輝く「水野」という文字しか出てこない謎の存在。
「水野さん」と言う言葉には何でも反応してしまうツトム君は、美大の彫刻科の悪友、シバ(山本喧一)に、子供の頃からたかられて、それでも「水野さんが・・・」と聞くと一生懸命、自転車走らせます。
嬉しい事、というのは水野さんと「軟式テニス」のダブルスを組む事になった事だったりして、もう、水野さんと軟式テニスをしている妄想に「みずのさ~~~~~~~~ん」とときめくツトム君。このテニスが軟式、という所の微妙さに笑ってしまいました。
私もやっていたのは「軟式テニス」であの独特のフォームと硬式と比べた時のなんとなくのだささ・・・そんなものが身にしみているから、特に笑ってしまいました。美大生には軟式テニスがよく似合う。
この加瀬亮演じるツトム君の、「あまり学生生活を謳歌しているとは思えない普通の大学生」のあれこれが、とにかく楽しいのですね。
部屋にあるミキサーで音楽をかけると、ついつい夢中になって裸になって踊る・・・・この踊りは加瀬君にしか出来ない踊り。なんせあの浮いた肋骨がないと成り立たない踊り、だからです。
なんで男の子は裸になるのか・・・高校の時、クラスに女子がいようとかまわず裸になる男の子がいて(全部は脱ぎませんよ)、もう、またハダカになった~とか、当たり前にしてしまっている男の子がいました。それを思い出します。
「ほら貝」というロック喫茶で、シバに(また)だまされて金を巻き上げられたあげく、たまたま居合わせたオカマのヒデキ(田中要次)と喧嘩になり(喧嘩を仕掛けたのはシバ)、何故かツトム君が剣道でヒデキと剣道決闘をするはめに!ヒデキはオカマとはいえ剣道インターハイ出場実力者。ほとんどシバに遊ばれているツトム君は、3日間で剣道を習うはめに・・・ヒデキ曰く「オカマを笑う者はオカマに泣くのよ!」
タイトルになった「かえるの川」というのは子供の頃、どうしても飛び越えられなかった小川の事なのですが、大学生になっても「飛び越えられないものだらけ」のツトム君の奮闘ぶりがとてもほほえましい。
主義主張だらけというより、脱力だらけのツトム君の姿を、あらあら・・・と言いながら、観ているこっちも脱力して「何かを飛び越えたような気分にさせてくれる」、そんな映画です。
ツトム君が、最後にジュースを飲みながら空を見上げて、笑う顔がとてもすがすがしくて、なにかを飛び越えたのね・・・ってほっとします。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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