受取人不明

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2006年2月26日 DVD

(2001年:韓国:119分:監督 キム・ギドク)

キム・ギドク監督のこの映画は、特集上映では上映されたのですが、一般公開はされず結局、DVDスルーに・・・・私は公開されるのをじっと待っていたのですが。

キム・ギドク監督の映画は程度は違っても、痛い。

世の中に痛みがわかる人とわからない人、2種類いると思うのですが、キム・ギドク監督は「痛みを知っている、痛い人々」というものを描きます。

映画監督で本国よりも外国で評価が高い監督というのがいるのですが、キム・ギドク監督も外国での評価が高い人です。

この映画では3人の若者が出てきます。

この3人はそれぞれ、「傷」を持っています。米軍基地の近くの村で、アメリカ軍人との間に生まれたハーフの青年、右目を怪我していつも前髪で目を隠している少女、そして、監督が自分自身だという、学校にいきたくてもいけず働いている少年。

3人は最初は平行して描かれるけれど、最後にはひとつになる。そして3人の痛みはそれぞれ違った方に痛む。

わかりやすい暴力というのが、たくさん出てくる映画で、犬商人が犬を食用にするシーン、ハーフの青年が偏見の目で見られて、いじめられ、それを母にぶつけるシーン、少女の目のシーン、弓のシーン・・・と目でみてわかる痛いシーンがあるのですが、少女の目の手術のシーンは逆に曖昧にぼかして映したりしています。

これが暴力だ!という声高な主張よりも、米軍基地の軍人たちが演習をしているすぐそばを高校生の少女がひとり歩いていたり、ハーフの青年がくやし涙を流したり、学校に行けずおとなしくしていなければならない少年が密かに隣の家の中をのぞく・・・そんなシーンに「痛み」が走っていると思うのです。

そして米軍基地のあり方というのも、挑戦的な監督らしいとりあげ方をしています。常に爆音をたてて戦闘機が空を飛ぶ、米軍軍人は少女を救うけれど、逆に傷つけもする。しかし、基地の恩恵を受けて地元の人は暮らしているという事実。

やさしいようで、乱暴。乱暴だけれどもやさしい。そして悲しい。

そんな多面的な事を映画にすることにかけてはキム・ギドク監督はもうどの映画でも自分の意志を貫いている、というのがわかるのです。

残酷なシーンだけが乱暴なのではなく、もっと残酷な事を人間はいくらでもすることができる。それをどう贖っていくのか・・・キム・ギドク監督の世界は厳しくて容赦がなくて、とても美しい。

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