単騎、千里を走る。

単騎、千里を走る。

Riding Alone for Thousand of Miles

2006年2月13日 TOHOシネマズ市川コルトンプラザにて

(2005年:中国=日本:108分:監督 チャン・イーモウ(日本部分監督 降旗康男)

チャン・イーモウ監督の映画で『秋菊の物語』というのがあります。

農村の妊婦、コン・リーが周りが止めるのに耳をかさず、どんどん訴訟の為に都会に出て行ってしまう・・・というもの。

この映画の高倉健は、息子の残したビデオから中国、雲南省へと飛んでしまいます。

寡黙な男がどんどん周り(嫁や中国でのガイドなど)が止めるのに、雲南省からまた奥地までどんどん行く・・・そこら辺の動機、というのが、ちょっと甘いといえば甘いかなぁ、と思うのですが。

東京フィルメックスで観た『雲の南へ』でも、主人公のお父さんは、特にこれ、といった動機を話さず雲南省への旅に出る。雲南省というのは、北京からは遠い所でちょっとした旅行になるのだ、と話を聞きました。

雲の南にあるものは何だったのでしょう。色々な人が息子の知合いだと言うけれど、それもなんだか心細い。そして実際、行ってみると、肝心のビデオに撮りたい仮面舞踊の役者さんは刑務所にいるのだという。

外国人を刑務所に入れるのに快く思わないのは当たり前ですが、それでも、寡黙に自分の道を行ってしまう高倉健であります。

言葉も通じない、ガイドがいなければ何処へも行けない・・・そんな心細さが映画の芯のような気がします。

そして石頭村という小さな村へ行くことにもなってしまう。

中国の雄大で、また、歴史がそのまま残っているような石頭村の町の様子、村の人が旅人を歓迎する為に長いテーブルをつないで食事をする風景。そんなさりげないけれど、美しい風景というのが随所に見られてよかったですね。

また、高倉健の息子、というのは病気で入院していて顔は見せない。感動の対面もない。これは『紅夢』という映画で、コン・リーが妾となって行く屋敷の主人が、ほとんど顔を見せずに声だけだ、というのと同じです。

存在を見せずに存在を出す。そんな手法が、思い出されます。

高倉健の旅は、成功だったのか、そういう話ではなくて、人付き合いの苦手な1人の男が中国へ行き、そして色々な人と出会い、風景にたたずむ・・・そんなたたずまいがいい映画です。

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