ぼくは歩いてゆく

ぼくは歩いてゆく

2006年2月11日 DVD

(1998年:イラン:90分:監督 アボルファズル・ジャリリ)

去年の東京フィルメックスの審査員長ですっかり親しみを持ってしまったジャリリ監督の1998年の映画。

ファルハードという9歳の男の子は、イラン革命の後のごたごたで、親から出生届けを出されないまま生活しています。

名前だって「愛称」で本名というものを持っていない。

しかし、家の為に働こうとしても、学校に行くにも、戸籍がなければ、何も出来ない状況をどうにかくぐり抜けるように、生き抜いていくのですが、父は麻薬中毒で頼りなく、母の身分証明書をくすねたり、近所の家の身分証明書をくすねたり・・・・とにかく、文句を言わず前に進む少年の黙々とした姿を映し出します。

本当だったら親がどうにかせいや!といいたい所、ファルハードは弱音を吐かず、文句も言わず歩き回る。その姿を通して子供たちの未来は?といった事を静かに見つめています。

劇的な事は起きないのですが、どうにもファルハードのやることは裏目に出てしまい、大人から不信を買う事になるばかり。

でもファルハードはめげない。

役所が書類ばかり求めて、何の機能もはたしていないことへの皮肉も含まれていて監督の静かな怒りの目が見えるようです。

実際にファルハードという少年と出会って話を聞いた事から、この映画を作ることにしたそうですけれど、監督は子供を甘やかさずにあくまでも淡々と「今」を見つめている。そんな視線がとても痛いような気がしました。 

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