歓びを歌にのせて

歓びを歌にのせて

Sa Somi I Himmelen/As It Is in Heaven

2006年2月10日 渋谷 Bunkamura ル・シネマにて

(2004年:スウェーデン:132分:監督 ケイ・ポラック)

この映画、見終わって何が一番良かったといって、出てくる役者さんの顔なんですね。

いわゆる「ハリウッド型美男・美女」からはほど遠い、本当に役者さんですか?と言いたくなるような人々が混然としていて、どれも「いい顔」しています。

このタイトルといい、上映館が渋谷だとル・シネマだということから、いわゆる「キレイなコーラス、歌が素晴らしいのよ、奥様!」みたいな映画に思える所(予告編では完全にこの線でした)・・・狭い北欧、スウェーデンの田舎の村で、よろよろコーラスやっている所へやってきた国民的音楽家・・・そのせいで、小さな村にさざなみがたつ、という人間悲喜劇なんです。

国民的音楽家は、心臓を病んでもう、音楽には近づきたくないところ、無理矢理と言っていいくらいにコーラス隊の指導をすることに・・・しかし、そこにはもう耳の遠い老婦人から、スーパーのレジのおねえちゃん、堅物牧師の妻、家庭内暴力に耐えている女性・・・歌は週に一度の楽しみです、という「集まり」なのです。

そこには、尻の軽い女と見られて軽蔑されている若い女性から、やたらと自意識過剰で嫉妬深い女性、声は美しいけれど暴力夫から逃れられない女性、不作法な何でも屋・・・・それぞれの話がうまくからみあって、皆、違う立場だけれど、週一回、コーラスの練習は一緒にやるだけ、という共通点だけなので、何かあるとすぐに騒ぎが持ち上がる。

なんとも不器用で、嫉妬や憎しみや、羨望、ねたみ、そねみ・・・そんな人々をまとめる・・・という大変さはあまり感じられません。

主人公の音楽家、ダニエルはある意味、やる気なし、なのですから。騒ぎが起きると結構、傍観者の立場に立つ感じです。

そんな中で、一般的な、すぐに思いつくような歌の練習ではなく、音とは何かを体験するワークショップのようなものを始めると、これがなかなか面白いじゃありませんか!となるところへ、教会の堅物牧師が、今まで村民の尊敬を集めていたお株を奪われそうな嫉妬から妨害をする。なんで、ダメなのよ、いや、いけない、いいじゃないのさぁ~~~~私、辞める!!!そんな事の繰り返しです。

この映画は歌だけで、人々が一致団結出来るのよ、という安直な媚びはなく、色々な人間関係を深く描く事で、なんとか音楽をやろうじゃないか・・・と紆余曲折を経るのをとてもじっくり追っています。そこが見所です。とっても濃い人間関係なのでした。

冬の風景と淡い夏の光景が、美しくも厳しくて、夏の風景は緑が青々というよりも、空は薄曇りで草原に草が生える・・・そんな程度です。

冬は犬ぞりになるのだろうけど、背景で、夏は馬車ならぬ犬車がわんわんわんわん・・・と通り過ぎるシーンなどは、さすが北欧って思わせるものがありました。

映画はキレイキレイな事ばかり描かない、それでもやっぱり音楽は歌は素晴らしい、というベースはきちんとしているのが、この映画をただの教養的な綺麗事音楽映画にはしていない、ユニークな点です。

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