白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々

白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々

Sophie Schole-Die Letzten Tage

2006年2月9日 日比谷シャンテシネにて

(2005年:ドイツ:121分:監督 マルク・ローテムント)

第55回ベルリン映画祭 最優秀監督賞、最優秀女優賞受賞

口喧嘩をしていて、売り言葉に買い言葉で、どんどん怒りがうなぎ登りになっていく・・・というのは大体の人は経験したり、見たりしたことがあると思います。

客が店員を怒る内にだんだん怒りがエスカレートして「店長を出せ!」とか・・・端から見ると理性がないように見えるのですが、言葉が言葉を触発して人間の感情に火をつける、というのが、この映画でも形を変えて出てきます。

これは実話で、21歳の反ナチス運動をしていた「白バラ」のメンバーの女子大学生、ゾフィー・ショルが兄と大学で反戦ビラを配った所を逮捕され、あっという間に裁判にかけられ処刑された、という話。戦後、ゾフィー達は英雄として語り継がれているそうですが、逮捕されてから、処刑されるまでの5日間、一体どんなやりとりがあったのか・・・それは謎だったところを、戦後、50年たって見つかったゲシュタポの記録から、映画として再現されたものなのです。

映画は冒頭、ゾフィーと兄のハンスが捕まるまでは、とても早く、刑務所に入れられたゾフィーは尋問を受けます。

そこで最初は、反逆罪を否定するのです。どうにか助かりたいと思って言い逃れをする。それはすればするほど、相手の思うつぼなのですが。

しかし、尋問官との会話の中で、だんだんゾフィーの中で、ナチスへの反感の思いが、増幅していく様子をひたすら室内の中だけを映す、という方法で、がっちりと心理戦を描いています。

外の風景というのはほとんどなく、刑務所の中の5日間。

しかし、若さ故とも言えるゾフィーの正義感は、死を恐れないという信仰に近いものまで昇華します。理性を失う事なく、自分の信じる事を貫く。それがだんだん、強くなっていく。

その過程をじっくり演じたのが『ベルリン 僕らの革命』のユリア・イェンチ。

主義主張だけを振り回す学生運動家というより、冒頭は友人と楽しくラジオを聞いていたり・・・ごく普通の女の子でもあります。

本当だったら死を逃れたい・・・また、白バラのメンバーを教えれば刑は軽くしてやろう・・・などという取引も出てくるのですが、決して自分の信念を曲げない、鋼鉄のような強さがラストにば~~~んと出てくる、誇り高い表情がいいです。

この誇り高い顔のアップって、スクリーンで観ると迫力です。ヒステリックな時代に、理性を失わなかった鋼鉄の強さ。

とてもがっしりした映画です。

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