天使
2006年2月3日 渋谷アミューズCQNにて
(2005年:日本:117分:監督 宮坂まゆみ)
この映画を観て思い出したのが、同じアミューズCQNで観た『苺の破片(カケラ)』という映画です。
不器用な普通の人々をやさしく見つめているという雰囲気が全編漂っているところかもしれません。
実際、この映画では「天使」が不器用な人々の周りにふわふわと漂っていて、ただ、見つめていて、佇んでいて、直接的には何もしないけれど、何かをしてくれる・・・という「見守る者」の存在をはっきり出しているのです。
宗教的なものではなくあくまでも現代の童話。
この天使を演じたのが深田恭子なんですが、映画は『下妻物語』以来、ということで、この天使役も『下妻物語』を観た監督が、キャストとして考えた・・・そうです。
この天使が、猫っぽくて、生まれたての赤ちゃんのようで、何も言わずふわふわと漂っているだけなのに、何故かジンライムが大好きだったり、気まぐれで、いたりいなかったり・・・・最初はびっくりしても、いなくなるとなんだか寂しい・・・って思う、そんな無垢さがとてもファンタジックでしたね。
また、天使が見守る人々が交差するのですが、シングル・ファーザーの永瀬正敏と恋人の永作博美、学校でいじめにあってしまう女の子(小出早織)、コンビニの店員(内田朝陽)と客(佐藤めぐみ)、料理の仕事をしている姉妹・・・だらだらしている姉(西田尚美)と料理の上手い妹(小林明実)・・・・その人物交差もほのぼのとしていて、わざとらしさがないです。
それぞれが不器用になんだか世の中上手くいかないよ・・・と頭をかきながらも生活している・・・そこがリアルで、しっかりしていて、天使がファンタジックにとても綺麗に映されているから、特撮の使い方も上手いなぁ、と思う訳です。これみよがしな特撮はなくあくまですんなり。
説得力のあるリアルさがあって、初めて特撮は生きるものだと思います。
脇に出てくる泉谷しげるが、部下の永瀬正敏と一緒に禁煙の看板を仕上げて、2人でもくもくタバコを吸いながら、「チャラけた服、着てんじゃねぇよ」とか、内田朝陽が、いきなり自分の部屋に現れた天使に、「ぐぉおっ!」と驚く様子とか、永作博美のちょっとふくれたような目線とか、西田尚美姉が見事に何もしない様子、小林明実妹が次々と料理を作り上げる様子、出てくる人の「様子」がとても可愛らしいのですね。
また、脚本もしっかりしていて、笑ってしまうような台詞からしみじみしてしまう台詞までよく出来た脚本だと思います。
全く台詞のない天使の深田恭子は本当に綺麗。それがおもちゃのようではなく、赤ちゃんのような綺麗さ、なんです。そのぷっくり感も観ていてとても気持ちいい映画でした。
誰も死なない、誰も傷つかない、誰も泣かない・・・そんな映画があってもいいと思う、観客はそこまで鈍感ではないと思う、と監督は言っていますが、逆に死んだり、傷つけたり、泣いたりする方が映画にしやすいのではないか・・・結構、難しい事に挑戦していると思います。
私は今、観客はとても鈍感な人が多いような気がするのですね。
天使は、何もしない、ただいるだけ・・・それだけで何かが変わる・・・その良さを敏感に描き出している映画なんです。
更夜飯店
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