ウォーク・ザ・ライン 君につづく道
Walk the Line
2006年3月28日 新宿テアトルタイムズスクェアにて
(2005年:アメリカ:136分:監督 ジェームス・マンゴールド)
もう完全にホアキン・フェニックスは「リバー・フェニックスの弟」という肩書きはいらない、と思いました。
兄リバーが生きていたとしてホアキンほど、屈折した色々な役を演じられたかどうか・・・それはもうリバーは亡くなってしまったのでわからないのですが、ホアキンはリバーの弟という背負わなくていい看板をずっと背負ってきたのです。
私があれ?と思ったのは『クィルズ』でサド公爵にさんざ振り回されてしまう神父の役の時でした。お堅くて真面目なのだけれども、誠実で、やさしい神父というのを熱演していました。それでいて正直者は馬鹿を見る、のような哀しい結果になってしまう。私はこういう人に弱いのです。あれで、私はホアキンが好きだなぁ~になったのです。『ホテル・ルワンダ』でも短いながら印象深い存在でした。
この映画は、実在のミュージシャン、ジョニー・キャッシュと後に妻となるジューン・カーターの長い長いつきあいの物語。
出合った時はお互い結婚している。子供もいる。ステージで、一緒に歌うようになって、ジューンに魅力を感じるけれど、同時にドラッグの誘惑にも負けてしまい、ボロボロ。
そんなボロボロな時、助けてよ・・・という気持で「結婚してくれ」と言ってもジューンは、きっぱり断り続けるのです。
本当に自分を必要としているのではなく、自分が救われたいから「結婚」という言葉を出してくるのを見抜いているのです。
しかし歌を職業にしている2人は同じステージに立ち続ける。なにかあるとジューンにすがってしまうダメダメ男。でもそれを甘やかさずに、自分は自分の道をきっちり持っているジューンを演じたリース・ウィザースプーンが、とても力強い女性に見えてしまいます。
ダメダメ男としっかり女。ダメダメ男と言ってもジョニーは歌手として成功するし、しっかり女といってもジューンは他の男性と結婚、離婚を繰り返す。そんな人間くささがとてもいい映画です。
2人共歌を自分で歌っている迫力と、やっぱり音楽映画は、音響のいい映画館で観るのが一番です。とても音響が大切にされていて、音楽だけでなくリズムなどもずんずん伝わってきます。これがDVDだったら、音響の良さの体感度は半分くらいになってしまうと思います。
ほんのちょっとだけ出てくる、ジョニーを見出すレコード録音スタジオの人がいい。でしゃばっては来ないけれど、ゴスペルを歌うジョニーに、ゴスペルじゃなくて自分の歌を歌ってみせろ、と言う。そして練習もしていないのに、歌った曲をレコードにする。
成功者の影には必ずといっていいほど、こういう人が存在するのですね。
成功といっても実際は車で移動のきついコンサートツアー。だんだん疲労してくるジョニーをホアキン・フェニックスはとても繊細に演じていました。アカデミー賞ではリース・ウィザースプーンが受賞しましたが、私としては去年だったら『ホテル・ルワンダ』のドン・チードル、今年だったらこの映画のホアキンに賞をあげたいです。
監督は、『17歳のカルテ』『アイデンティティー』と私の好きなタイプの映画を作る人。この映画も過去2作とは違うけれどとてもしっくりくる(アメリカ映画で、しかも私はジョニー・キャッシュ、ジューン・カーターを全く知らないのに)映画を作ってくれる人だと思うのです。この監督の持ち味は「繊細さ」だと思います。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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