イヌゴエ
Voice of Dog
2006年3月15日 渋谷シネ・ラ・セットにて
(2005年:日本:100分:監督 横井健司)
家で猫を飼っているとその時々の表情で、もし、しゃべったら・・「ち。」とか「う・る・さ・い!」とか「いやだね」(一応、メスだから)ととっても可愛くない事言っているのではないか、と思います。
アニメとか、テレビの動物番組、映画のアニマトロニクス・・・なんかだと擬人化されて人間そのものを動物にかぶらせている事が多いのですが、この映画はそんな今や「当たり前」になってしまっている錯覚を上手く使ったアイディアがいいですね。
まず、その前に、主人公の青年を紹介。
芹澤直樹(山本浩司)、26歳。悪臭公害対策協会で働く「臭気判定士」
鼻が犬並にきいて、臭いに敏感な事をいかして、臭いが気になる家を訪問し、その悪臭の原因を調査するのが仕事。
鼻がきくのはいいけれど、その分、直樹は、普通の人だったら気にならない臭いまで気になってしまい、いつもマスクをかけ、家の中は食事をするときは必ず換気扇を回し・・・といった臭いに潔癖な青年なのです。
しかし実家の父が旅行に行くというので、突然、預けられたフレンチ・ブルドッグ。人間の生活臭も耐えられないのに犬なんて!なのに強引に預けられる。
そのフレンチ・ブルドッグが突然、しゃべり出すのです。しかし、最初に聞こえてくる言葉は大阪弁のおっさん声(遠藤憲一)で「腹、へったのう。ごっつメシ食いたい。」散歩して他の犬に出合えば「交尾したいのう」・・・
犬がしゃべる、というより犬の声が聞こえてしまうのです。犬のような鼻を持つ青年と人間のようにしゃべる犬。
この2人組?のドタバタが始まります。
しかしドタバタといってもどこかのどかで、不思議さが自然に描かれます。
ペスと名付けたその犬は、誰にも預かってもらえず・・・・仕方なく仕事に連れて行くと・・・名助手ぶりを発揮してしまうのですね。
その訪問する家の色々がまた面白い。
人間の臭いの感覚なんていい加減なもので、臭いには意外とすぐ慣れてしまいます。鈍感なんですね。
でも、犬のように嗅覚が発達していたら?犬が本音をばりばり言ったら?そんな相対する組み合わせが絶妙。
山本浩司という人は、ごく普通の自然な男の人という雰囲気がいいです。
また、ペスを演じたゴン太は、立派な動物タレント事務所のタレント犬なので、演技が上手い。
そして自分が臭いに耐えられないからと、周りを拒絶していた青年が犬と行動を共にするうちに、なにか、強いものを身につける。
そんな課程がとてもすんなりしていて、微笑ましくも、ちょっと切なくて、おかしくて・・・。
どうも両親はペスを拾ったらしい・・・ペスは元の飼い主の事を覚えている。では元の飼い主を捜そう・・・反発していた一人と一匹のバディフィルムみたいにもなってきます。
監督は、『ヒッチハイク溺れる方舟』の監督さんでした。あの映画にも山本浩司さんは出ていましたね。(同じ日に観た『シムソンズ』にも出演)役者だけでなく映画を作る方の人でもあります。器用な人が器用に不器用な青年を演じる、そんな面白さもありました。
ペスはいつもべらべら喋る訳ではなく、聞こえたり、聞こえなかったり・・・その鍵を探すために日本海に行く2人。そのシーンはとても綺麗でいい雰囲気でした。自然なさりげない、ケレン味の全くない姿勢がいいのです。
ちなみに私が子供の頃ずっと飼っていた犬の名前もペス、でした。「お前はペスだ」っていう台詞にまた、1人受けてしまいました。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
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