リバティーン

リバティーン

The Libertine

2006年4月20日 シネセゾン渋谷にて

(2005年:イギリス:120分:監督ローレンス・ダンモア)

リバティーン(Libertine)=インモラルな人生を送る人。常に欲望を求め、特に性的な行為に喜びを探す人。

さて、この映画は17世紀のイギリスが舞台です。

まず、美術がいいですね。国王や貴族が出てきても、キンキラ美しくないのです。

あまりにもゴテゴテの衣装を着ている為に、あまりお風呂に入れないのね・・・という説得力ある「高貴な人々」

また、道も泥のぬかるみばかりで、ドロドロ・・・これでは疫病が流行るの当たり前です。大変な不衛生な生活描写。

そして、話も堕ちに堕ちていくロチェスター伯爵(ジョニー・デップ)の話で、暗いのですが、画面がまた、暗い。もう、冒頭からラストまで、あまり屋外の映像がないというのもあるのですが、とにかく暗いのです。

17世紀に電気はなかったはずだから、灯りといえば火しかなく、芝居の舞台も松明が照明なのです。だから暗くて当たり前・・・なのですが、そこをきちんと暗く描くっていう所が好きです。現代の観客の目を楽しませる為に、色鮮やかにくっきりときんきらきんにするというのに背を向けたひねくれぶり・・・というのが、国王に平気で盾つくロチェスター伯爵の姿にダブります。

伯爵というのはどんなに落ちぶれても伯爵であるから怖いものなんてないんだよ、私には・・・という傲慢さがよろしいです。

ロチェスター伯爵というのは、詩人でもありますが、同時にポルノ作家であり、女漁り、酒におぼれ梅毒とアルコール中毒で33才で死去。

もう、後半は国王に追放されて堕ちに堕ちていくロチェスター伯爵のボロボロな姿を、ジョニー・デップはこれでもか、これでもか、と演じてみせる。それが見所。

大変猥雑な台詞・・・ロチェスター伯爵の書く戯曲は、王政をとことんエロスと笑いで皮肉ったものなので、もう字幕は18禁の言葉がずらずら。

こういうのは、舞台の台詞(シェイクスピアなど)もそうなのですが、耳で聞き流したい所、字で読まなければならないのはちと苦しい。

また、当時のイギリスの立場というのがちらちらと出てくるのですが、フランスの『ダルタニャン物語』の時代なので、当時、フランスがルイ14世で華々しくしていたのに比べて、英国ったら・・・というのが出てきますが、もうフランスに馬鹿にされちゃってる英国、それを見抜いているロチェスター伯爵・・・なんとかフランスを見返してやりたいと焦る国王・・・といった英国史の要素、また、劇作、戯曲の世界でもあるので古語英語がばりばり出てくる所なんか・・・ただ、ぼぉ~としていてはよくわからない部分が多いという日本人にはちょっときつい映画。

しかし、この映画を観る前に「ジョニー・デップが出ているってだけで、価値があるわよね」なんて話をされて、どうでしょう・・・と思っていましたが、軽薄な観客を見事に裏切り、足蹴にするジョニー・デップの勇気がかっこいいです。よくやった、ジョニー!

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