君とボクの虹色の世界
Me and You and Everyone We Know
2006年4月12日 渋谷 シネ・アミューズ ウェストにて
(2005年:アメリカ:90分:監督 ミランダ・ジュライ)
第58回カンヌ映画祭 カメラドール(新人監督賞)、国際批評家週間グランプリ受賞)
この映画の良い所は、嘘くささが全くない、ということだと思います。
では、ドキュメンタリーですか?というとそうではなく、あくまでも「アメリカのどこかの街」で起きる普通の人々の色々な事が、少しずつリンクしていく様子をとても可愛らしく、丁寧に、やさしく描いているのです。
この映画に出てくる人達は皆、普通の人です。特に特殊な才能がある訳でもなく、特別な立場にいる人達でもない。
めずらしい冒険が起きる訳でもない。描きようによっては退屈な事柄ばかりなのですが、実に面白い。
監督、脚本、主演のミランダ・ジュライという人が演じるクリスティーンは、ビデオを使った芸術家を目指している、普段はエルダー・キャブ(高齢者タクシー)の運転手。
靴屋の店員のリチャードは、黒人の妻と離婚されて、混血の2人の男の子と取り残されるけれど、まだ、妻に未練がある様子。
その子供達、2人は密かにパソコンのチャットに夢中。
高校生の女の子、2人組は、リチャードの同僚をからかった所、逆に仕返しをされて、ちょっとむ、としてしまう。
リチャードの隣の家の女の子は、「将来の夫と娘の為に」とバーゲンで家庭用品を集め始めている。
そういう人々が個別に描かれるようで、見事に皆、どこかでつながっている・・・人間、全くひとりという事はあり得なくて、いつでも誰かしらと接触している・・・というとても普通で簡単な事、だけれども普通すぎてあまり気にしない事に気がついて、それを物語にする、という手法が観ていてとても気持いいです。出てくる人々、普通なのですが、よくよく見るととても綺麗な顔立ちをしていたり、子供達もとても賢そう。
よくよく見ると・・・・って所が大事ですね。映画というのは、よ~くじっくり観るもの(特にスクリーンでは)そこで初めて気がつく、という発見を描いた映画でもありますね。
ひとりよがりにならずに、人に見せる、という事がよくわかっている映画。
この映画は、まだ新人だったミランダ・ジュライにサンダンスと日本のNHKが出資して作られたインディペンデント映画なのですが、本当にいい映画ってどんな映画?と原点に立ち戻るような気持にさせてくれる映画です。
クリスティーンが、老人を乗せて道を走っていると、隣の車の上に置き忘れられたビニールに入った金魚を見つけてしまう。
その金魚をどうにかしようとするあたりがとても好きです。
ビニール袋に入った金魚一匹で、ちょっとしたドラマがもう、作れるのです。ミランダ・ジュライという人は派手な所より、日々の生活の細かい所によく目を配っている人だと思います。
更夜飯店
過去持っていたホームページを移行中。 映画について書いています。
0コメント